マスターズツアー:アイアンフォージを十倍楽しむ十の視点
マスターズツアーが普段のゲームと大きく違うのは4デッキで構成を組み、相手の1デッキを使用禁止(BAN)する4Hero1Banという対戦システムです。選手たちはどんなデッキをBANするか、どんなデッキに勝てるような構成にするか、頭を悩ませて構成を考えます。
「この選手はどういう考えでこんな構成にしたんだろう?」という部分が見えてくると、マスターズツアーの観戦は何倍も面白くなります。
今回はその助けとなるべく、Off Curveというサイトからわかるマスターズ予選と、LHS(ラストヒーロースタンディング、端的に言うと負け抜け制)と対戦システムは違いますが、3/1~14にかけて行われている賞金付き大会、Max open cup6の結果をもとに、現環境における各クラスのメタゲーム上のポジションを紹介します。
1.ローグ
アイアンフォージ予選第四週から頭角を現した、現環境の王者。
直近のマスターズ予選において勝率1位がコンボローグ、2位が秘策ローグとまさかのローグのワンツーフィニッシュ。もちろんアグロローグもアグロデッキ最強格として存在しており、3種類のデッキがどれも強力なインパクトを持ちながら共存している最強クラスです。
特にコンボローグは現環境で明確に不利な相手がほとんどいない万能キャラ。様々なデッキと対戦する可能性があるBO5というルールにおいて、その汎用性がもつ価値は大きいです。特に一戦目、三つのデッキの中からどれが出てくるかわからない中で、不利な相手が少ないコンボローグは最も選出しやすい無難な選択肢となるでしょう。
また、大型ミニオンを簡単に脳天直撃ガールで返せることから聖典パラディン、コンボローグに有利な秘策ローグ、武器対策さえなければ圧倒的打点を誇るアグロローグも十分なデッキパワーがあります。
あまりにローグが強いことから、軽い呪文をたくさん使うローグ対策として往餓術師がにわかに流行してきました。
下馬評通りローグがアイアンフォージを舞台に主役として暴れまわるのか、往餓術師に食われるのか、その行く末に注目です。
デッキ例
2.プリースト
アイアンフォージ予選第一週から常に使用率2位を占めてきた鉄板クラス。多少のメタの変遷では揺らがない、安定したパワーがあります。
Max open cup 6では、トップ16の採用者数が13人とクラス採用率1位。ちなみにその13人中11人がハイランダープリースト、他のデッキを寄せ付けない圧倒的な採用率です(2位は、OTKデーモンハンターの8人)。
ハイランダープリーストはほとんどのデッキと対等に戦える上に、精神与奪者イルシアが絶対に無理なデッキが環境に複数いるため(OTKデーモンハンター、サイラスウォリアーなど)、プリーストをBANせざるを得ないという、相手にBANを強制させる働きも期待できます。とりあえずハイランダープリーストは採用するとして、というところから構成を考え始める選手もきっと多いことでしょう。
ただ、その圧倒的な採用率が裏目になることも。過去には同じように圧倒的な採用率を誇っていた爆弾ウォリアーがターゲットにされ、爆弾ウォリアーにだけ絶対勝つデッキで集められた「爆弾メタ構成」が大活躍することもありました。
プリーストもいくつかのかなり不利なマッチアップをもっており、狙い撃ちにされる可能性は十分にあります。粉砕されしクトゥーンを入れているデッキは、試合展開の遅いプリーストを狙い撃ちにしているとみて間違いありません。
デッキ例
3.ウォリアー
アイアンフォージ予選一週目、二週目では間違いなく王者でしたが、その地位は過去のものになりつつあります。
扇動する船頭と鎧職人の圧倒的な対アグロ性能が売りの「サイラスウォリアー」が、この環境初期をけん引していましたが、プリースト、パラディン、OTKデモハンなどといった不利デッキが大会環境で幅を利かせるようになり、デッキの魅力は大きく下がってしまいました。
一方、反比例するように魅了を上げたのが爆弾ウォリアーです。コンボローグ、ハイランダープリーストといった爆弾ウォリアーの得意とする相手が環境を席巻しているうえに、ハイランダーメイジという新しい有利デッキが現れ始めました。
直近のマスターズ予選でも、爆弾ウォリアーの入った構成の活躍が目立っています。プリーストに強いうえに、プリースト対策をしてくるようなデッキにも、もれなく強いという面白い特徴があります。プリーストを中心としたメタができるとしたら、そこは爆弾ウォリアーの独壇場です。しかし、爆弾ウォリアーはアグロデッキへの脆弱性を抱えており、アグロ構成に食い物にされてしまうリスクも抱えています。
アグロ構成が少なく、爆弾ウォリアーが活躍するのか、アグロ構成が多く、サイラスウォリアーが復権するのか。どのウォリアーが活躍するかは、周りのデッキ速度に大きく左右されることになります。
デッキ例
4.パラディン
聖典パラディン(ほうきパラディン)一択。プリーストとともに、環境初期から常にトップTierを走り続ける鉄板クラス。
除去あり、回復あり、挑発あり、カニライダーのぶんまわりあり、と攻防揃ったバランスのよさが魅力。スクロマンス末期からずっと活躍し続けているデッキで、その強さは、今更語るまでもないでしょう。
ただ、その真価は「聖典」のコストが下がり、智恵の聖典とペン投げ野郎が揃って初めて発揮されるもので、うまく揃わなかった時の弱さが少し気になります。カードが揃わないままアグロデッキにひき殺されることも少なくないので、ローグ・プリーストの二大巨頭に比べると少し採用は落ちるかも、という印象です。
え、Max open cup6トップ16にビッグパラディンがいるって?いやいや、ほうきパラディン一択って言ったでしょ。そんなデッキ活躍するわけないって。
まさか、ね。
デッキ例
5.メイジ
ウォリアーが最近落ち込み気味といえば、上り調子で最も勢いがあるのはメイジといえるでしょう。
バーンメイジは最近開発された比較的新しいデッキですが、現在のメタにかみ合い、マスターズ予選でも日に日に結果を残しています。プリーストはハイランダープリーストが主流となって回復カードが減り、アグロローグやトークンドルイドといったアグロデッキに有利で、苦手なウォリアーが落ち目、とメタゲームの回りすべてが追い風になっています。
全くデッキが回らない事故も多く起きるデッキですが、回ったときのパワーも大きいので、対戦回数の多いBO5では、どこかで回って勝つことができるだろうとルールすら追い風になっています。
もう一つ、最近大きく躍進を遂げたのがハイランダーメイジ。鉄板クラスである、プリースト、パラディンに強いことから直近のマスターズ予選から突然暴れ始めました。アメージング・レノがどんなアメージングな活躍をしてくれるのか、視聴者側としてはワクワクが止まりません。
デッキ例
6.デーモンハンター
OTKデーモンハンター一択(今度こそ本当)。
防御不能なOTK手段で攻めの遅い相手は瞬殺でき、大回復によってアグロ耐性もある、とここまでなら最強デッキのようですが、最近はちょっと落ち込み気味。
得意デッキだった「サイラスウォリアー」が減ってしまったのと、昔は有利マッチだったコンボローグがフリック・スカイシヴでモアーグの加工師を根絶やしにするという対策をしてきました。さらに、現在主流なプリースト・パラディンにも相性が悪いです。影の狩手ヴォルジンというコンボ対策カードが追加されたことも逆風。
いろいろマイナスを並べましたが、そのポテンシャルは健在で、Max open cup 6トップ16の内半数の8人に採用されているのは流石の一言。
フェニックス年で生まれた新クラスが、逆風をはねのけてデビュー年の締めを大活躍で飾ることができるのでしょうか!?
デッキ例
7.ドルイド
序盤にチビクッチャベラーを並べても、ローグ・プリーストの二大巨頭に処理されてしまうことから、トークンドルイドは進化しました。
トレント要素を加えて、ドロー強化+過剰繁殖のマナ加速を加えることで早期にグローフライの群れ+森の魂といった対処不能なほどの圧倒的展開を目指すようになりました。
こうなると全体除去のないコンボローグや、全体除去の枚数の少ないハイランダープリーストは、対処が困難になります。バーンメイジの台頭によって、アグロの中での立ち位置が悪くなってしまったトークンドルイドですが、トレントの力をもって復権なるかに注目です。
また、ハイランダードルイドもマスターズ予選やラダーで少しずつ結果を残しています。除去や回復、挑発がありアグロ相手とも戦えて、偉大なるゼフリス・覚醒者エリーズといったハイランダー専用のパワーカードでコントロールデッキとも戦える、万能なデッキです。このような万能なデッキは、様々なデッキと対戦する可能性があるBO5では需要が大きく、普段のラダーや予選以上に目にすることになるかもしれません。
デッキ例
8.ウォーロック
Zooウォーロックか、チケッタスウォーロック。
Zooウォーロックはアグロデッキの中でもミニオンのサイズが大き目で、バーンメイジに不利がついていない貴重なアグロデッキです。ウォリアーが落ち目気味なのも追い風。
しかし、このデッキの最大の欠点は現環境の王者コンボローグに勝てないこと。そこさえ目を瞑れば分回りが強いデッキで対戦回数の多いBO5に適したデッキではあります。コンボローグをBANすることを想定するのか、コンボローグに当てないように出し順に気を付けるのか、Zooウォーロックを持ってくる選手の戦略に注目してみましょう。
チケッタスウォーロックはプリーストを殺す最強の刺客です。プリーストの項目で触れたプリースト狙い撃ち構成が現れるなら、間違いなくこのデッキが採用されるでしょう。このデッキが活躍するかは、プリーストがどれだけいるかにかかっています。
デッキ例
9.シャーマン
全く見かけないと侮ることなかれ。
Max open cup 6スイスラウンドにおいて、まさかの対戦ゲーム数5位!?
多くの競合プレイヤーが、BO5の大会に進化シャーマンを持ち込みました。全体勝率51%となんともいえない数字ではありますが、環境の王者ローグに対して勝率68%を出しており、多くの選手が持ち込むであろうコンボローグに対抗できるのは、大きな強みです。
大会シーンにおいて、メタがかみ合った結果普段見かけないデッキが突然脚光を浴びるというのはよくあること。ローグ殺しとして、まさかの大活躍があり得るか!?
なおトップ16の中にシャーマンはいなかった模様。やっぱりダメかも?
デッキ例
10.ハンター
全く見かけないと侮るなかれ、その2。
Max open cup 6スイスラウンドにおいて対戦ゲーム数堂々の10位!!圧倒的最下位!!ダメじゃん!?
と思わせて勝率は55%とウォーロックと並び同率一位!!トップ16にもハンター採用プレイヤーを2名送り込むという、不人気ながらもその可能性を示す結果となりました。ちなみに使われたデッキはハイランダーハンターとエサハンターです。
え、え、エサハンター???
誰も知らないエサハンターがマスターズツアーで暴れるところ、見てみたくない?