「リッチキングの凱旋」開発者インタビュー(2022年11月)
新拡張「リッチキングの凱旋」について、BeerBrick・4Gamerによる合同インタビューを行いました。インタビューに答えてくれたのは、Chadd Nervig氏とLeo Robles Gonzalez氏の2人です。
「リッチキングの凱旋」のストーリーや新たに追加されるクラス”デスナイト”、新キーワード”マナ渇望”など、様々なことについて伺いました。
新拡張「リッチキングの凱旋」について
新拡張「リッチキングの凱旋」の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
– 今回の新拡張「リッチキングの凱旋」はどんなストーリーなのでしょう。
今回の拡張セットではリッチキングがハースストーンに再登場します。Warcraftでも最も人気なキャラクターの一人を酒場に呼び戻すことに開発陣もワクワクしています。
新拡張「リッチキングの凱旋」では、リッチキングがブラッドエルフの都市シルバー・ムーンを攻撃します。これはWarcraftの世界ではリッチキングが登場する2つ目の拡張の序盤のストーリーに当たります。
– つい最近WoW(World of Warcraft) Classicでもリッチキングの拡張がリリースされました。このタイミングは狙っていたのですか。
ハースストーンでもWoWでも、それぞれの拡張はずいぶん前から計画していたので、お互いのチームで「もしかしたら同時期のリリースになるかもしれないね」と笑いながら話していましたが、実際にそれが本当になりました笑。
– 今回のトレーラームービーはこれまでと異なる3Dアニメ作品でした。これはどんな経緯で作られたのでしょうか。
カッコいい作品に仕上がりました。今回の拡張セットは大掛かりなことをやりたい!というコンセプトだったので、トレーラーにも力を入れました。コミュニティの反応もとても良かったです。
– ChaddさんはAlliestraszaさんと告知動画に出演していましたね。撮影での裏話があれば教えてください。
とても楽しい撮影でした。私達いるこの温かいカリフォルニアに、5トンもの雪を持ってきてAlliestraszaさんに色々挑戦してもらいました。彼女が撮影の裏側の動画を公開しているので、是非チェックしてみてください。
– マナ渇望は過去のランク付き呪文にも似ていますが、今回このようなシステムを追加した理由はなんでしょう。また、ランク呪文との違いはどんなところでしょうか。
※マナ渇望の効果:自分のマナクリスタルが特定の数ある状態だと追加効果を得られる
「リッチキングの凱旋」では、デスナイトの追加が大きな変化となります。そこで、今回の拡張特有のキーワードを作る際に、他の要素ではあまり複雑にならないようにしました。
今回のストーリーはスコージ VS ブラッドエルフですから、「ブラッドエルフ側の要素も取り入れたいよね」となり、マナ渇望というコンセプトにたどり着きました。ブラッドエルフといえば魔力(マナ)ですからね。
過去のランク付き呪文はプレイヤーが上手く利用していたので、同じようなメカニズムを再度使いたいと思っていました。今回のマナ渇望はランク付き呪文と異なり、カード毎に必要なマナ数が決まっているため、カード毎に異なるアップグレードを楽しめます。
– マナ渇望のカードを調整する時、マナ渇望に必要なマナ数を調整する可能性はありますか?
はい、その可能性は十分考えられます。ナスリア城殺人事件では、満力の斧の吸魂が3から2に変更されたように、マナ渇望の数値を変更する可能性はあります。
– 無料カードとして配布されている太陽の泉は初めての中立の呪文です。なぜミニオンではなく呪文に、しかも中立にしたのでしょうか。
ブラッドエルフの世界観では「太陽の泉」はとても重要な場所です。最初から何かしらの形で導入したいと考えていました。また、長い間中立の呪文で何かしたいとも思っていました。
最終的に良いデザインとして落ち着いたいので嬉しいです。
– 太陽の泉は今のところあまり使われていないようです。私たちが見つけていない、もっと良い使い方があるのでしょうか。
Leo: 私はデッキ作成時の30枚目で悩むときは、その30枚目に入れるようにしています。カードを生成するのが難しいクラスでは、どんなクラスの呪文も出るのは面白いところです。私は、ゲームで提供されているカードは何でも使おうとしているので、このカードにはワクワクしています笑
Chadd: 今のところ、多くのプレイヤーが凍てつく玉座の騎士団のカードに注目しているので、太陽の泉にまだ視線が集まらないのだと思います。新環境では、血のルーンのデッキで大きな効果を発揮すると思うので期待して下さい笑
もちろん、コントロールデッキのリソース補給カードとしても使えるでしょう。プレイヤーの皆さんには、あまり大量のカードを生成することを意識しすぎないで欲しいですね。3枚の呪文を生み出すだけでも十分に有効活用できます。
そして、「リッチキングの凱旋」のメイジのデッキでは太陽の泉を使ったかなり楽しいデッキを作れるはずです。
– 「アンデッド」のコンセプトを教えてください。
「デスナイトならアンデッドがなければ始まらないよね」というchaddの一言から始まりました。小さなグールを出したり、大きなパッチウァークのようなミニオンを出したり。アンデッドの集団こそがスコージですから、それを種族として出すのが正しいと思いました。
ナーガといえば呪文のように、アンデッドといえば死です。アンデッドは死にフォーカスした種族です。今回の拡張にあるボーンフリンガーというカードは、自分の前のターンに何体のアンデッドが死亡しているかでバフ量が変わります。今回の拡張ではアンデッドを有効利用するデッキが出てくるはずです。
– 「アンデッド」の追加と同時に、「デュアル種族」も追加されました。これはアンデッド以外の種族も複合するのでしょうか。
デュアル種族は大きな進歩です。これまでのミニオンはアンデッドでも「アンデッド」タグが付いていませんでした。
今回の変更により、ようやくアンデッドにすることができました。ただ、アンデッドと他の種族に限るわけではありません。海賊パッチーズは海賊+悪魔になりますし、コックのクッキーは海賊+マーロックになります。
ただ、アンデッドが一番利用されると思います。例えば、骨のドラゴンはドラゴンなのかアンデッドなのかとなったとき、今後はドラゴン+アンデッドになります。
新クラス「デスナイト」について
新クラス「デスナイト」の詳細はこちらの記事をご覧ください。
– デスナイトクラスのデッキ構築の際、血のルーンを3つセット(トリプル)すれば、全ての「血」カードを採用できるのでしょうか。
その通りです。デスナイトのデッキ構築をするときは、まず血のルーンをトリプルにするか、あるいは3種類のルーンを1つずつ採用するかなど、デッキの方向性を決めてからデッキ作成します。
血のルーンを3つセットすれば、あらゆる血のカードを採用できるようになります。
– 血のルーンをトリプルにしているデスナイトで発見を行った場合、他のルーンのカードも出現するのでしょうか。
はい、基本的には他のルーンからもカードを発見することができます。ただし「不浄のカードを発見する」という効果のカードもあるので、その場合は特定のルーンだけ発見することになります。
– 随分前から新クラス「モンク」や「デスナイト」の追加は噂されていましたが、デスナイトを追加した理由はなんでしょう。また、いつ頃から考えていたのでしょうか。
ハースストーンに最初に追加されたクラスはデーモンハンターでしたが、その反響を見て次のクラスの追加を考えるつもりでした。結果的にデーモンハンターはかなり好評で、クラスの追加がハースストーンにとって非常に重要なプロジェクトになりました。
デスナイトの追加が決まったのは約1年半前です。これは拡張セットの内容が決まるかなり前から決めていたので大変でした。デスナイトは人気のクラスですから、開発チームもかなり興奮していました。新クラスの追加で「リッチキングの凱旋」は、様々なプレイヤーが楽しめるものになっているでしょう。
– ちなみに「モンク」クラスの追加は期待できますか?
今のところはデスナイトに集中していいて、何も言えません笑
でも開発メンバーもモンクが好きですから、将来的には考えるかもしれません笑
– 「死体」というシステムのデザインや開発のストーリーについて教えてください。
死体システムは、断末魔以来となるミニオンの「死」を扱うシステムです。デスナイトは「死」を司るクラスですから、ミニオンの「死」に価値を置き、「死」にスポットを当てたいと考えました。
デスナイトが不浄ルーンを使うとき、ボコボコとミニオンを召喚させたかった。そうすると、沢山のミニオンが死亡するので、「死んでいくミニオンを何か活かす方法がないか」「新しいリソースにしようじゃないか」と考え、死体というシステムが生まれました。
試しにテストをしてみたところチーム内でかなり好評だったので、次にどうやってそのリソースを使っていくかを考えました。最終的には、ロード・マロウガーのような楽しいミニオンを思いつきました。
ゲームプレイの観点では、新しいリソースは楽しい要素になりますが、実装はかなり難しいものです。なぜなら、リソースの補充方法とリソースの利用方法のバランスが難しいからです。
今回はデッキのミニオンを多くしたり、呪文でミニオンを召喚したりすることでリソースを積み立てる手段を豊富に用意しました。ですので、死体リソースを使うカードがある程度あっても、バランスは上手く保てると思います。更に、ヒーローパワーで死体をいつでも得られるようになっていることも、そのバランスに貢献してくれています。
– デスナイトはこれまでなかったルーンや死体など複雑なシステムを持っています。上級者向けにデザインしたのでしょうか。
特に初心者お断りというわけではありませんが、確かに複雑です。ただ、ハースストーンも初期の頃とはプレイヤー層が変わっていますから、ゲームをもっと深くするためにある程度複雑にしてもよいと考え、今までより複雑なクラスとしてデザインしました。
今後はそれを最大限活かせるような仕様を考えたり、バランスにしたいと思います。
– デスナイトのルーンやヒーローパワーには、他の候補やアイデアがありましたか。
デスナイトのデザインを開始したときからヒーローパワーには悩みました。というのも、ヒーローパワーは強すぎて毎ターン使用するものでも、弱すぎて全く使われないものでもいけないからです。デザイン時には3マナ消費して発動するのものや、ルーンシステムを活用するものも考えました。
「特攻グール」も、最初は突撃ではなく急襲でした。ただ、ヒーローパワーは使用したときに気持ちよくなれるものでなければならないと思い、急襲ではなく突撃にしました。
メイジのヒーローパワーなら、1点とはいえ「相手のヒーローにダメージをあたえてやった」という印象が得られます。急襲では相手の盤面が空だと、グールはなにもせずに死ぬだけです。今のデザインはとても良いものになっていると思います。
突撃がかなり怖いメカニズムだということは理解しています。デスナイトのデザインでは「ヒーローパワーで突撃を持っているんだ」ということを意識しており、ハンドバフの要素でグールは強化したOTKは防ぐようにし、グールを変身させたりした場合は突撃を失うような仕様にしています。
– デーモンハンターが追加された時は、良くも悪くも非常に印象的なクラスとして登場しました。デスナイトは大丈夫ですか。
実装直後のデーモンハンターはあまりにも強すぎました。結果、すぐにナーフされたのですが、私たちはデーモンハンターから色々なことを学びました。
デーモンハンターはローテーション直後(スタンダードの年の切り替わり直後)のタイミングで追加されましたが、これは他のクラスも大きな変更を受ける直後だったので、デーモンハンターにどう対応するか、そしてデーモンハンターと他のクラスの力の差を測ることが難しいタイミングでした。
今回はヒドラ年の3つ目の拡張セットでの追加となり、他のクラスは新カードが追加されるだけです。そのため、デーモンハンターのときよりは調整しやすくなっています。
また、デーモンハンターはいくつかのコンセプトを想定したカードが弱かったため、使われないデッキタイプががありました。逆にいくつかのカードは強すぎ、その結果デッキのアーキタイプが大きく偏りました。デスナイトはデーモンハンターと比べると、5割多くカードを持って登場するので、様々なプレイスタイルが楽しめると思います。
とはいえ、蓋を開けてみないとどうなるかわかりませんから、必要に応じてバランス調整は行う予定です。
その他の要素
– 新しく登場する3Dのレジェンドヒーロースキンの開発話を教えてください。モバイルでの負荷は大丈夫でしょうか。
プレイヤーにとって見た目は重要です。ダイヤモンドカードは上手く出来たと思っているので、今回のレジェンドヒーロースキン作成に踏み切りました。モバイルできちんと動作するかどうかは非常に重要ですので、問題なく楽しめるように調整しています。
エモートをしたり、呪文を使ったり、攻撃をした時、ダメージを受けた時など色々なアニメーションを用意しています。是非楽しんでください。
– 今後もレジェンドヒーロースキンは追加されますか。
今回はデスナイトとハンターのレジェンドヒーロースキンが追加されますが、皆さんのフィードバックも取り入れながら、今後は他のクラスでも導入していきたいと思います。
– 長い間TwitterでQ&Aを行っていたDean Ayala氏が開発チームを抜けましたが、今後開発チームの誰かがSNSを通じてコミュニティとのQ&Aなどを行う予定はありますか?
Deanの活動により、コミュニティとのつながりができていたことには価値を感じています。何かしらそのような活動を行いたいと思っていますが、まだ具体的なことはお伝えできません。
Chadd:最後に、今回の新カードには日本の競技シーンのファンに喜ばれる不浄のデスナイトカードがありますよ。楽しみにしていてください笑