「タイタンの目醒め」開発者インタビュー

タイタンの目醒め インタビュー

新拡張「タイタンの目覚め」について、開発者へのメディア合同インタビューを行いました。

インタビューに答えてくれたのは、Edward Goodwin氏とAlicia Cornelia氏の2人です。

「タイタンの目醒め」に登場するタイタンのストーリーやコンセプトなど様々なことについて伺いました。

新拡張「タイタンの目醒め」について

新拡張「タイタンの目醒め」の詳細は、こちらの記事をご覧ください。


– 今回の新拡張「タイタンの目醒め」のストーリーを、ハースストーンプレイヤーにもわかるように教えてください。

タイタンの伝承

Edward:タイタンはWorld of Warcraft(以下、WoW)において、とても有名なキャラクターです。タイタンは惑星から惑星に移り、各惑星で生命を育んでいく神のような存在です。

その中の一つがWoWの舞台であるアゼロスです。アゼロスにおけるタイタンの本拠地はウルドゥア(Uldir)で、今回の拡張はそこが舞台になっています。

タイタンは巨大で神のようなパワーを持っていますが、ハースストーンという1対1のゲームで「タイタンを召喚したらゲーム終了」とならないように注意して開発しました。召喚してからも攻防が続くようなデザインにしています。

– タイタンはヨグ=サロンと関連があるそうですが、他にもハースストーンに登場したキャラクターとの関連はありますか?

ヨグ=サロンの牢獄 | Prison of Yogg Saron

Alicia:ハースストーンにログインするとヨグ=サロンの牢獄というカードを獲得できます。

Edward:ヨグ=サロンは牢獄の中にいるので心配しなくて大丈夫です。他のキャラクターについては、現在ブログで11人のタイタンのストーリーを公開しています。

効果やまだ明らかにされていないキャラクターは、今後を楽しみにして下さい。

– 何年も前から「ハースストーンにタイタンを登場させてほしい」という意見がありましたが、今このタイミングでタイタンを登場させたのはなぜでしょうか?

Edward:まず機能の面からお話すると、今回のタイタンのように召喚したりしたタイミングで能力を発動するミニオンはかなり前から考えていました。ただ、拡張が出るたびに登場させるか迷った末、毎回見送っていたのです。

また、タイタンというキャラクターをいかにハースストーンに落とし込めるかも以前から考えていました。

最近のハースストーンの拡張を開発する上で、機能的に試していたことが強く、面白く、そしてタイタンというキャラクターにもマッチしたため、今回タイタンを登場させることになりました。

普段のハースストーンは、WoWの世界観にちょっとふざけた世界観を加えていますが、タイタンは重厚でシリアスな真面目よりのキャラクターです。

これを忠実に再現するとハースストーンらしくなくなってしまいます。そのためハースストーンらしさを出しつつ、タイタンのシリアスなストーリーを語るには時期を見定める必要があり、今回がその良いタイミングだと思いました。

– タイタンのストーリーを知るにはWoWのどのストーリーをプレイすればいいのでしょう?

Alicia:WoWのレイドゾーンであるウルドゥア(Ulduar)がタイタンの本拠地となっています。今のWoW Classicの最新レイドにもなっています。ヨグ=サロンの牢獄を含め、カードのイメージはWoWのウルドゥアから来ています。

Edward:注意してほしいのですが、ハースストーンでは現在のWoWの世界ではなく、3000年前のまだ旧神達に侵食されていなかったウルドゥアを舞台にしています。

そこはまだシンプルな都市であり、タイタンを補佐するような番人もいます。今回の拡張ではその番人達もレジェンドカードとして登場します。

巨人の父ホディル | Hodir Father of Giants

– WoWにタイタンは9人しか存在しないそうですが、ハースストーンオリジナルのタイタンはどのようにデザインしましたか?

Edward:タイタンのデザインは楽しい挑戦になりました。これに関しては、WoWの開発チームが新しいタイタンを作ることを快く許してくれたので、新しいタイタンを私達がデザインするが可能になったのです。

作成に当たり既存のタイタンとハースストーンのクラスと比べたのですが、例えばシャーマンやウォリアーにはピッタリのタイタンがいる一方、デスナイトとローグには既存のタイタンが当てはまらないように感じられました。

デスナイトのタイタンを作るにあたり、まずデスナイトにおける神のような存在とは何かを考えたのです。そして、WoWに登場したプライマス(Primus)が死を司る長のようで、デスナイト当てはまる気がしました。

プライマスはタイタンではありませんが、死後の世界のタイタンというイメージができたので、デスナイトのタイタンに割り当てました。(WoWのチームには怒られるかもしれません)

プライマス - デスナイト

ローグに関しては、以前拡張ゴブリンVSノームの時に登場した巨大なメカをイメージしてデザインしています。

V-07-TR-0Nプライム - ローグ

– タイタンの、3つの能力から選んで使うというデザインについて教えてください。

※タイタンは、召喚時や攻撃時に3つの特殊能力から1つを選んで使用できます。タイタンの能力のシステムの詳細はこちらをご確認ください。

雷鳴のゴルガンネス | Golganneth the Thunderer
轟く大海 | Roaring Oceans天空の王 | Lord of Skiesシャルガーンの怒り | Shargahn's Wrath

Edward:今回のタイタンのシステムは、いくつかの拡張を経てようやくリリースにこぎつけました。

というのも、ハースストーンは常にシンプルなゲーム性を目指しており、どんな初心者の方でも楽しめるように作っているからです。

今回のタイタンのシステムは、過去一番難しいかもしれません。それでもできるだけ簡単なシステムにしようと開発しています。

プレイヤーの皆さん、特にプリーストプレイヤーの方は、「発見」のメカニズムを何度も使っているはずです。発見のメカニズムに慣れ親しんだ方であれば、タイタンは使いやすいカードだと思います。

– ハースストーンのゲーム展開を考えると、ミニオンが3ターンも生き残るのは難しいと思います。タイタンが3つ目の能力を発動する機会はあるのでしょうか?

Edward:タイタンが3ターン生き残ることができるかどうかという点は、まさに開発チームの狙いです。

プレイヤーの皆さんには、タイタンを出したターンに1回だけ能力を発動させれば良いのか、あるいは全ての能力の発動を狙うのか、敵のタイタンの能力をどこまで使わせるか、いつ倒すか、などを考えてプレイしてほしいと思っています。

– タイタンをデザインする上でボツになったデザインはありますか?

Edward:確かにボツになったデザインはありますが、これは難しい質問で、ここではお答えできない質問です。

今回のタイタンをデザインする上で採用されたアイデアには、以前の開発時に提案されたものも含みますし、逆に今回見送ったアイデアが今後登場することもあるからです。

Alicia:ハースストーンが進化していく中で開発チームがいつも心がけているのは、何が楽しくて、この先にどんなゲームにしようか、ということです。そのためどんなアイデアもゴミ箱行きになることななく、いつも様々なコンセプトを試しています。

– 新キーワード「鍛造」はタイタンと関連性があるのでしょうか?

※鍛造:手札の鍛造カードをデッキにドラッグすることでアップグレードできる新システム。(2マナ必要)

自然の抱擁 | Embrace of Nature鍛造 自然の抱擁 | Forge Embrace of Nature

Alicia:まず、「超電磁」も戻ってくるので今回の新キーワードは「鍛造」と「超電磁」になります。超電磁はバトルグラウンドにもあるので、馴染みのあるメカニズムでしょう。

鍛造は、デッキにカードをドラッグすることでカードをアップグレードできるメカニズムです。タイタンがガラクタから素晴らしいものを創り上げていくというストーリーにリンクしています。

– なぜ「鍛造」と「交換可」を『デッキの上にドラッグする』という同じシステムにしたのでしょうか?例えば、鍛造専用のオブジェクトを作るなどは考えなかったのでしょうか?

Edward:ハースストーンの長期的な戦略を考慮して、このシステムになりました。

プレイヤーが干渉できるオブジェクトは作れますが、その度にUIデザインを考える必要がありますし、鍛造専用のオブジェクトを作ると、今後他のメカニズムが作りにくくなります。

ハースストーンが今後10年、20年続けられるゲームになるようオブジェクトを新設するのではなく、交換可と同じシステムにし、1マナではなく2マナ、デッキに戻るのではなく手札に戻る、というシステムにしました。

– なぜこのタイミングで「超電磁」を復活させたのでしょうか?

高貴なるミニロボ | Noble MinibotSP-3Y3-D3R | Sp-y-dr

Alicia:タイタンの「新しいものを創ったり、改良したりする」というストーリーにぴったりだからです。

Edward:超電磁は、開発チームにとってもプレイヤーにとっても楽しいキーワードだと思います。ただ、ストーリーとの兼ね合いが難しかったのです。

例えば海底都市では(水と電気の相性が悪くて)黒焦げになってしまうでしょうし、ナスリア城殺人事件の雰囲気とも関係がありません。

これまで何度も超電磁の復活を狙っており、タイタンがストーリー的にぴったりなので今回の復活に至りました。

– 今回の開発者動画で「ティールはパラディン初の復活系ミニオン」と紹介されていましたが、過去にはラリー!七つの鯛罪もありましたよね…?

ティール | Tyrラリー! | Rally七つの鯛罪 | Anyfin Can Happen

Edward:実はこれには私達も動画を作る途中で気づいていました。

ただ、この時のテイクが最も良い演技ができていたんです。(笑)

内容としては少し間違ってしまいますが、少しでも良い動画にしたいと思ってこのテイクを採用しました。

– Edwardさんはプロプレイヤーから開発チームに転身しましたが、開発チームに入ってみて気づいたことはありますか?

※Edward = Gallon:マスターズツアー・ラスベガス(2019)で準優勝するなど、南北アメリカ地域のグランドマスターとしても活躍したプレイヤー。2020年に大会シーンを去り、開発チームに参入。

Edward:この質問には、何日も話せるくらいのネタがあります(笑)

その中で一番確かなことは「ハースストーンの開発者全員が、本当にハースストーンを愛している」ということです。

時折「開発者はユーザーのことを気にしていない」というようなコメントを見ることがありますが、全くそんな事はありません。開発チームに入って3年ほど経ちますが、今でも開発チームはハースストーンを愛していると感じます。