「夢見る大地エメラルド・ドリーム」開発者インタビュー

新拡張「夢見る大地エメラルド・ドリーム」について、開発者へのメディア合同オンラインインタビューを行いました。

インタビューに答えてくれたのは、リードデザイナーのCora Georgiou氏とシニアゲームデザイナーのAleco Pors氏の2人です。

「夢見る大地エメラルド・ドリーム」のストーリーや新メカニクスのコンセプトなど様々なことについて伺いました。

新拡張「夢見る大地エメラルド・ドリーム」について

新拡張「夢見る大地エメラルド・ドリーム」の詳細は、こちらの記事をご覧ください。


– 「夢見る大地エメラルド・ドリーム」というテーマについて教えて下さい。

Cora:ハースストーンの開発チームとしては、ずっとやりたかった題材でした。毎回の企画会議でアイデアの1つとしてあがっていた題材です。ようやくWorld of Warcraft(WoW)側でエメラルドドリームのコンテンツが出たこと(*)により、ハースストーンでも着手できるようになりました。エメラルドの「夢」はどこか牧歌的で、イセラがてがけるアゼロスの一部です。そして、それと対をなすエメラルドの「悪夢」の対比をお楽しみください。

*これまでもイセラの世界はお馴染みだったが、昨年のDragon Flightの最後のパッチで、より深く楽しめるコンテンツとして登場した。

– 「鼓舞」(*)のコンセプトを教えて下さい。

*鼓舞:ヒーローパワーを鼓舞ヒーローパワーに変更する。変更後に鼓舞するたび、そのヒーローパワーが強化される。対象となるクラスはドルイド、ハンター、メイジ、パラディン、プリースト、シャーマン

ビターブルーム・ナイト Bitterbloom Knight

Cora:今回の拡張は善対悪(夢 VS 悪夢)というエメラルドのストーリーになっています。それを機能的にするときにどうするか考えました。善側はドルイドで、その象徴となるのが成長や時間経過による変化でした。自然のように、小さな苗木が大樹に成長するようになっていくイメージです。それを実現するため、ヒーローパワーが時間経過とともに大きくなっていったらどうなるだろうか、という発想でした。そしてプレイヤーには、ヒーローパワーを大事に育てて欲しいという狙いがあります。

– 「鼓舞」できるクラスはどのように選択しましたか?

 
一風変わった猟犬使い Exotic Houndmaster悪夢の騎手 Darkrider

Cora:どちらかにするか考えるのは、とても楽しいプロセスでした。明らかにこっちだよね、というクラスもあります。ドルイドは確実に「夢」です。光をモチーフにしたパラディンやプリーストも同様に「夢」側です。「悪夢」側は、ウォーロックやデスナイトが悪役になることが多いことから考えました。

どちらにもとれる場合はクラスの特徴から考えました。ハンターやシャーマンは自然を愛する、自然呪文を使うことから「夢」側、ウォリアーやデーモンハンターは攻撃的なところや、たまに悪人が登場することから「悪夢」側に分けました。

そこからチーム全体で納得するまで検討し、クラスのアイデンティティを守れるようにしてから、各クラスのアーキタイプを考えていきました。

– プリーストには影の一面もありますが…?

Cora:シャドウプリーストも少しだけ考えました。それもプリーストのアイデンティティのひとつです。ですが、鼓舞のシステムで考えたときに「ヒーローパワーが時間経過とともにどんどん強くなっていく」というコンセプトはシャドウプリーストのダメージが手に負えなくなってしまうのではないか、と考えました。とはいえ、ダメージ上限をつけることは面白くないと思いましたので、光のプリーストを選択しました。

– 「悪夢の恵み」(*)のコンセプトを教えて下さい。

*悪夢の恵み:カードに特別な効果を付与する。10種類の効果があり、どれが選ばれるかはランダム。

狂気の怪物 Creature of Madness

Aleco:悪夢の恵みは悪夢クラスを象徴し、それらの雰囲気にあうようにしました。まさに「悪夢」とはなにか、ということを表現しようとしました。狙いとしては、プレイヤーたちに「すごいものを発見したぞ」というワクワクした体験をしてほしいと思いました。もしくは悩むような選択肢を提供したいと考えました。今回の効果の選択肢はとてもユニークなので、プレイ毎に選択肢がかわり、そもそも私達が考えた「発見の面白さ」に焦点を当てています。今までの発見の目盛りを振り切るような面白さになるよう考えました。

– 今回セットの開発において、印象に残っているエピソードを教えて下さい。

ハムウル・ルーントーテム Hamuul Runetotem

Aleco:他のクラスよりもドルイドを象徴したセットにしたい、という気持ちがチーム全体でありました。今回はドルイドが主人公ということで、他のクラスに影響力を持たせつつ、ドルイドにも特別感を出したい、とずっと話し合いました。そうして、「最も鼓舞されるクラスはドルイドにしたいよね」というふうにアイデアを出しました。

ハムウル・ルーントーテムはかつての翡翠のゴーレムのように、どんどん強いゴーレムを使っていけます。開発中、「コレはドルイドっぽさが足りないよね」と皆で話しあいながら開発したのがとても楽しかったですし、最終的にたどり着いたところには、すごく誇りを感じています。

– 今回のセットでは、ドルイド以外のクラスも「選択」や「マナ加速」が可能です。これはドルイドのアイデンティティを失うことにもつながると思うのですが、どのように考えましたか?

 
巨狼の教え Grace of the Greatwolf砕けた力 Fractured Power

Cora:はい、そういうことも考えました。以前、デスナイトに強くフォーカスしたセットがありましたが、クラスにフォーカスしたセットという意味では2回目でしょう。そして、クラスの特徴を他のクラスに共有するのは初めてです。

クラスの特徴を他のクラスに分けるとしても、分け与える先のクラスの特徴に見合ったものにしようと注意しました。ハンターの選択であれば、ダメージか獣召喚かを選択します。ウォーロックのマナ加速なら、自身のマナを破壊しないとできません。これらのクラスが、ドルイドそのものになる、ということはないでしょう。各クラスならではの方法でドルイドらしさを出すようにしています。そして、本家ドルイドは選択の選択肢が強かったり、マナ加速については他の追随を許しませんので、ドルイドのアイデンティティは揺るがないものだと思っています。

– お二人の好きなカードを教えて下さい。

Aleco:私はこの質問が大好きです。たくさんあるので、インタビューの媒体ごとに変えています。前のインタビューでは、悪夢の恵みをめちゃくちゃに使えるウォーロックの洞割れのワロウや、とてもユニークな効果を持つメイジのクオンズと答えました。どちらも派手なレジェンドカードですね。

 
洞割れのワロウ Wallowthe Wretchedクオンズ Qonzu

Aleco:今回は一番可愛い母ガモとお答えします。雄叫びで可愛い子ガモを出すんですよ!闘技場では子ガモが活躍するんじゃないかと思っています。とても可愛い子ガモを楽しみにして下さい。

 
子ガモ

Cora:私もこの質問が大好きです。私も毎回違う答えにしています。一回目はデザインがとても格好良いドルイドのマローン、2回目はデスナイトのナイセンドラを選びました。ナイセンドラはWoWのレイドボス戦をハースストーンのデザインに落とし込めたと思います。

ナイセンドラ Nythendra

Cora:今回選ぶのは、中立のレジェンド呪文シャラドラシルです。5種類の夢カードを手札に加えますが、汚染されたバージョンにもなります。今回のセットでは「どこかで夢カードを使えるようにしたい」と考えた結果、このカードが生まれました。穢れた夢カード、特に穢れし悪夢はビジュアルも気に入っているので、とてもワクワクしています。

シャラドラシル Shaladrassil穢れし悪夢

– 「野生の神」とはどのような存在ですか?

ウルソック Ursocアッガマガーン Agamaggan

Cora:野生の神は、自然魔法における偉大な存在です。この拡張において、いなくてはならない存在だと思っています。マローンセナリウスはすでにカードとして登場していましたが、WoWでは非常に強力なキャラクターにもかかわらず、ハースストーンではあまり掘り下げられていなかったので、今回再び採用しました。その壮大さを示すため、コストを高く設定したため、コストにみあうような強さにしました。そして、美術部門が作り上げた、デザインも非常に美しいので、ぜひデザインにも注目してください。

– ラプター年の最初のセットとなりますが、1年を通じてどんなことを考えていますか?

ラプター年へようこそ

Aleco:2つのことをみていますが、どちらも原点回帰ともいえます。

1つはテーマのことで、ウォークラフトに忠実であるということです。ラプター年を振り返ったときにWarcraftっぽい年だったよね、と考えられる年にしていきます。

もう1つはプレイに関することで、自分の盤面にミニオンを置くことを強みにしていきます。効率的なミニオントレードの価値を、数年前の段階まで戻したいと考えています。コツコツと積み上げたリードをカード一枚で盤面を返されることがあまりないように、盤面にミニオンを出すことをもっと重視していきたいです。

▼ラプター年についてはこちらの記事をご欄ください。

– ラプター年のコアセットはどのように考えましたか?

Aleco:先程の回答で挙げたことを中枢に考えています。ですが、ゲームプレイのためにコアセットが絶対に必要なカードにしないようにしています。なぜなら、コアセットのカードは主役になってはいけない、と考えているからです。テーマ的にも技術的にも新しいカードに焦点を当てたいので、コアセットに焦点があらないようにします。コアセットと拡張のカードの役割がバッティングしているのは、良いデザインだとは思いません。コアセットは、あくまで拡張カードの引き立て役として使ってほしいと考えています。

▼ラプター年のコアセットについてはこちらの記事をご覧ください

エルーンに選ばれしアヴィアナのテキストはとても特徴的で美しいですね。わかりやすさとのバランスはどう考えていますか?

エルーンに選ばれしアヴィアナ Aviana Elunes Chosen

Cora:カードのテキストを決める時は、とてもニッチで特殊なバランスがあります。最も重要なのは、カードが読みやすく、どんなレベルのプレイヤーでもわかりやすいことです。

テキストが謎めいている場合は、狙いがあり、意図的にその様にしています。今回のエルーンに選ばれしアヴィアナはわかりやすいテキストではありません。しかし読めば3ターンの間「なにか」があり、その後「すごいことがある」ことがわかります。アヴィアナは過去のハースストーンに何回か登場していますし、意図的に少しわかりにくいテキストにしました。テキストがわかりやすい、ということは非常に重要です。ですが、意図的にわかりにくくなっていいる場合は、今回のような美しいテキストになっているはずです。

– 最後に一言お願いします。

Cora:開発チームは「やっと、このセットを作れた」「やっとプレイヤーの皆が、このセットで遊べる」というワクワクでいっぱいです!セオリークラフト配信も楽しみです。日本の皆さんのプレイや感想も心待ちにしているので、ぜひ楽しんでください!

Aleco:ARIGATOU GOZAIMASU!(ありがとうございます!)

インタビューに応じてくださったAleco氏(左)、Cora氏(右)