新拡張・新年度に関する開発者インタビュー(2021年2月)
BlizzConlineにて発表された様々な新要素について、開発者のLiv Breeden氏とJoseph Killion氏へインタビューを行いました。
新拡張セット「荒ぶる大地の強者たち」のコンセプト、コアセットの意図やリニューアルの狙い、新モード「ハースストーン マーセナリーズ」についてなど、気になったことを質問し、それについて頂いた回答を掲載します。
- Liv Breeden:ゲームデザイナー、初期デザインチームのリーダー、全体のゲームバランスやセリフ、要素などを調整
- Joseph Killion:ゲームデザイナー、新拡張セットのリードデザイナー、マーセナリーズも担当
新拡張セット「荒ぶる大地の強者たち」について
新拡張セット「荒ぶる大地の強者たち」について発表された情報は、こちらの記事をご覧ください。
– 「荒ぶる大地の強者たち」の舞台コンセプト・世界観はどのように選ばれましたか?
Joseph:まず開発の初期段階で、ドラゴン年のように1年をかけたストーリーを作りたい、という話になりました。そして、ハースストーンの元ネタとなっているWorld of Warcraft(以下、WoW)の世界であったように、何も知らずに降り立った新人が、最後には素晴らしいヒーローに成長するストーリーを表現したいと思いました。
そのスタート地点として、ホードのメンバー(WoWのキャラクター)が初期に訪れるエリアが良いと思い、今回の舞台を選びました。WoWのプレイヤーとして、どこか懐かしいこのエリアを舞台にしたセットで、今年一年をスタートしたいと思いました。
Liv:レベル上げや経験値を稼ぐ、という観点は新要素の「ランク付き呪文」に踏襲されています。最初はランク1の呪文が、マナクリスタルが増えるごとにランクアップしていく、そんな達成感が今回の拡張には盛り沢山です。
– 「呪文系統」の導入に至った背景を教えて下さい。
Joseph:メタを新鮮にし、新しい相乗効果を生むにはどうしたらいいか、と考えた時に浮かんだのが、呪文を細分化する「呪文系統」でした。なぜなら、新しいデッキのアーキタイプを作ることができるからです。
例えば、ブルカンは自然呪文のみを強化します。これは、自然呪文を多く持つシャーマンにとって新たな相乗効果を生みます。WoWでは呪文が系統毎に分かれおり、この点がWoWを遊んだことがある人にとっては、馴染みのあるシステムになっています。
Liv:コアセットを作り直すという観点から見ても、今呪文に系統を付与するのは良いタイミングだと思います。昔のカードにも、これからのカードにも適用されます。ハースストーンの基本的なルールが、新しく追加されたようなものと考えています。
– 「呪文系統」の開発中の面白いエピソードがあれば教えて下さい
Liv:「呪文系統」については開発チームの中でも長らく議論され、やるからにはしっかりやりたい、と考えられてきました。他に考えていたのは、WoWであるように、各クラスをある属性に特化させる方法です。
例えば、ウォリアーにはFury、Protections、Armsの3種類があります。片手武器、両手武器、盾のような属性ですね。ただ、そうすると10クラスが3属性を持ち、全部で30の属性が生まれてしまい、複雑になります。今回の細分化は、まだ理解できる範疇だと思います。炎の呪文がメイジに属していても、ウォーロックに属していても、炎の呪文だ、というのは分かりやすいと思います。
コアセット・グリフォン年の新要素について
コアセット・グリフォン年について発表された情報は、こちらの記事をご覧ください。
– なぜモチーフに「グリフォン」が選ばれたのでしょうか?グリフォンはアライアンスの象徴にも見えますが、アライアンスをモチーフにした拡張セットもリリースされるのでしょうか?
Liv:未来の拡張セットについては、今はお伝えできません。ごめんなさい。
グリフォンは、ウォークラフトやファンタジーの世界において重要な役割を果たしています。WoWの基本に戻る、という意味で、誰しもがそのモチーフとして理解できるグリフォンを選択しました。
– コアセットの導入は初心者・新規プレイヤーにとって優しい施策だと思います。どのような意図なのか、他にも初心者向けの施策があるか教えて下さい。
Joseph:コアセットの導入は、新しくハースストーンを始めるプレイヤーにとって、すぐに遊べるデッキを作れる良い施策だと思っています。それ以外にも、復帰プレイヤーにもデザインチームが検討した、即戦力となるデッキを1つ進呈することを予定しています。
Liv:コアセットには、昔のカードを取り入れることができます。それにより新規のプレイヤーと、熟練したプレイヤーが「昔はこんなカードがあったんだよ」と話しながらプレイできるようになります。そして熟練プレイヤーは、懐かしいカードに再び触れながらデッキ構築を楽しむことができるので、コアセットは過去・現在・未来をつなぐような役割を果たすことができると思います。
– 「イセラ」「マリゴス」「デスウィング」の変更が発表されましたが、「ノズドルム」や「アレクストラーザ」も変更されますか?
Liv:はい、私達は主要な5つのドラゴンをリニューアルしてコアセットで遊べるように準備しています。ご期待下さい。
– ハースストーンを象徴するようなドラゴンカードをリニューアルしたのは何故ですか?
Liv:確かにこれらのドラゴン達は重要なキャラクターで、コアセットに採用されるという点が重要でした。しかし、ノズドルムなどはデザインとして少し挑戦的なカードになっており、今の効果のままでは、新しく作りづらいカードもあります。そのため、リニューアルすることで、他の新しいカードとの相乗効果を生み出せるようにしたいと思いました。
– これらドラゴンを新しいカードとしてリリースするのではなく、同名カードのままリニューアルするのは何故ですか?
Liv:現在のドラゴンの効果も残したいとは思っていますが、リニューアルしてもワイルドでは今の効果のままプレイできるのでバランスがとれると考えています。
– 今後も「ダークムーン・レース」のようなミニセットの追加する予定はありますか?また、「ダークムーン・レース」の評判はいかがでしたか?
Joseph:なかなか良い評判をもらっています。拡張セットと拡張セットの間のメタが落ち着きがちな時期に新しい風を吹き込むことができるので、今後も続けていきたいと思っています。
– シャーマンのヒーローパワーのアップデートに関して、何故「怒れる大気のトーテム(呪文ダメージ+1)」が「剛力のトーテム」に変更されたのでしょうか?
Liv:呪文ダメージトーテムは、状況に応じて強さが極端に変わるトーテムです。全く意味をなさないときもあれば、呪文トーテムがいることで、敵のミニオンを全て破壊できることもあります。これは、他の3つのトーテムのパワーと比べるとあまりにも違います。このように1種類のトーテムが頭一つ抜けている状況を変えるために、変更しました。
– シャーマンのカードではなく、ヒーローパワーをアップデートしたのは、他のクラスと比べて劣るからでしょうか?また、他のクラスもヒーローパワーをアップデートする予定はありますか?
Liv:シャーマンの性能というよりは、(前述の通り)ヒーローパワーの4つのトーテムのバランスを取るという狙いが強いです。
ヒーローパワーのアップデートについては、他のヒーローについても考えていはいます。例えばプリーストは2ターン目に何もすることがなく、相手ヒーローを回復するだけのの虚しいヒーローパワーになることもあり、そのようなことは減らしたいとは思っています。ただ、現状では今のヒーローパワーにかなり満足しています。
– スタンダードに大きな変化が訪れますが、ワイルドにも変化を期待できますか?
Liv:ワイルドはプレイヤーが懐かしのデッキを触り、イカれたデッキを楽しめる場所です。カードの調整を望む声もありますが、そのようなコンセプトとバランスをとるのが難しいです。
私達は、楽しく、イカれたことができるままでいて欲しいと思いますが、あまりに1つのデッキが飛び抜けているような状態になれば対策をしたいと思っています。ですが、極力は変更を加えずにいたいと思っています。
– バトルグラウンドに「キルボア」という新種族が追加されることが発表されましたが、どんな種族か教えて下さい
Liv:キルボアは血の結晶(Blood Gem)を使う種族です。そのため、血の結晶を生み出すキャラクターもいれば、その結晶の置き場所にこだわるキャラクターもおり、非常にユニークな遊び方ができるでしょう。1ターン中にいくつもの選択をしなければならず、これまでとはかなり違った遊び方になるはずです。
– メインの10ヒーローが登場した「英雄の書」とは異なり、「傭兵の書」にはどんなキャラクターが登場しますか?
Joseph:今年は1年を通じて、新人からヒーローになるストーリーをお伝えしたいと思っています。そのストーリーを伝えるキャラクターとして、傭兵を用意しました。傭兵の書では、登場する傭兵の目から見た1年のストーリーをお伝えしていきます。例えば、シャーマンのレジェンドであるグルカンが登場します。
Liv:傭兵の書では、拡張セットでは表現しきれないストーリーをお伝えできます。それによりプレイヤーが好きな、または嫌いなキャラクターが生まれると思います。そして、これらのストーリーはWoWのストーリーを知らない方でも楽しめるように努力しています。
新モード:「ハースストーン マーセナリーズ」について
– 新モード「ハースストーン マーセナリーズ」について、伺えることがあれば教えてください
Joseph:開発初期段階なので詳しくお伝えはできないのですが、シミュレーションRPG風のゲーム性で、WoWの人気キャラクターでチームを作る、ローグライクなゲームになる予定です。
– ソロアドベンチャー形式ではなく、全く新しいモードを作るのにはどんな意図がありますか?
Joseph:ハースストーンでは、ゲームとして新しい遊び方を追求し続けています。バトルグラウンドが良い例で、通常のモードとは大きく異なりますが、楽しんでいるプレイヤーが沢山います。同様に、新しい遊びなのですが、どことなくハースストーンらしい、馴染みのあるゲームにしつつ、スタンダードにもバトルグラウンドにも興味がないプレイヤーでも楽しめるモードを作りたいと思っています。
– 公開された「マーセナリーズ」マップの最上位にいるキャラクターは、キング・ムクラですか?私はキング・ムクラが大好きなので強力なボスであることを期待しています。
Joseph:はい、キング・ムクラです。マーセナリーズには敵味方問わず、WoWでおなじみのキャラクターが登場しますので楽しみにしていて下さい。そう言ってくれたあなたのために、強くしておきますね。