1億人を魅了するハースストーン、次なる挑戦を待つ

The Washington Postに投稿された以下の記事の翻訳です。意訳を含みます。
原文:Hearthstone basks in the glow of 100 million users, awaits its next challenge


幅広く人気を博すカードゲーム”ハースストーン”の成功は、リリース当初には明らかではありませんでした。原作となるウォークラフトブランドによる熱烈な打ち上げにもかかわらず、このゲームの成長には多くの苦労がありました。しかし、今やこのゲームは1億人のユーザーというマイルストーンに到達しました。

ブリザード・エンターテイメントの小さなチームで作成されたこのゲームは、細かい改定やバランス調整を常に続ける比較的ニッチなジャンルのものです。今やハースストーンは、盛んなe-sports環境を完備し、また多くのカードゲームを愛する観衆を持つ、デジタルカードゲームの王とも言える存在です。

初期プロトタイプのハースストーン

 

ハースストーンのシニアVP兼執行プロデューサーであるChris Sigaty氏は「ハースストーンチームは開発中にいくつかの困難な時期を経験しました」と述べ「内部からもコレは本当にブリザードのレベルのものか?、との質問もあった。しかし、ハースストーンに触れてからこれは素晴らしいゲームになり、愛すべきものになると考えていた。そしてそうなった」と述べました。

ハースストーンの開発は2008年に「Project Pegasus」(プロジェクト ペガサス)という名前でスタートしました。2014年にリリースされる6年前のことです。元ハースストーンプロダクションディレクターのJason Chayes氏は、チームは開発初期段階で”魅力”と”アクセシビリティ”という教義に注目していた、と述べています。

ハースストーンプレイヤーはコンピューターで、タブレットで、またはスマートフォンで9つのヒーローから1人を選択し、デッキを作り、ミニオンまたは呪文の力で対戦相手の体力を0にしようとします。対戦は短くそして激しいもので、コーヒーブレイクや洗濯を待つ間に十分です。ゲームの美しさは、炉端のジョッキに注がれたビールや画面外からの歓声により、カジュアルでありながら競争のある雰囲気を家庭にもたらします。

デッキは、ゲーム内で得たお金や現実世界のお金で購入したパックから得たカードを使って作られます。これはブリザードにとって有益なコンポーネントになりました。しかし、時間かお金、またはその両方をかけても相応の報酬を得られなかったプレイヤーから批判を受ける可能性があります。

ブリザードの開発チームはパックを”価値を感じるもの”にするために何年も働いてきたと語っています。例えば、重複するレジェンドカード(最も高いレアリティのカード)が出現しないようにしました。これらの昨日はデジタルカードゲームならではで、実際のカードゲームの体験に基づいています。

2013年当時のハースストーン開発メンバー

 

ハースストーンは最初から伝統的なカードゲームの限界を逸脱した、デジタル初のカードゲームとして構築していました。強大な競合であるマジックザギャザリングやポケモントレーディングカードゲームは成功したが、そのデジタル版は本物に近づけようとしたものでした。ハースストーンはある種の自由を許すスクリーン上で動くゲームとして作られました。

「物理的なカードゲームで”ファイアーボール”を使おうとしたら、カードを相手に差し出して「あなたのミニオンに6ダメージを与える」または「あなたをヒーローとしてダメージを与える」と言って発動します」ハースストーンのクリエイティブディレクターであるベン・トンプソン氏はこう語ります。「そしてそれは、魅力的ではありません。照明が変わり、ダメージを与える火球が相手のヒーローに急降下する。これはデジタル空間でしかできないことです」

ゲームのシンプルさとアクセシビリティは、ゲームの人気を高めてくれる重要な要因です。ハースストーンのコンテンツ作成者でありプレイヤーでもあるOctavian “Kripparian” Morosan氏は、わかりやすく視覚的に訴えるものがゲームの視聴者にとって魅力的だったと考えています。

「何が起こっているのかを理解することは非常に簡単です。あなたがどこにいるのか、そして取るべき行動についてあなた自身の意見を作り上げることは非常に簡単です」とKripparian氏は語ります。「これは非常に観て理解しやすく、YoutubeやTwitchで視聴する人にとっても大きな影響があります」

Twitchは多くの生放送配信の本拠地であり、ハースストーンは国際トーナメントや学生大会を放送するプラットフォームとして大成功を収めています。Twitchの分析サイトであるSullygnomeは、昨年のTwitchの平均視聴者数においてハースストーンを第7位とし、3億7700万時間以上視聴されたとしています。

ハースストーン初期のコンセプト画像

 

ハースストーンのe-sportsリーダーであるChe Chou氏は、競争力のあるゲームタイトルをどのように発展させるかを問われた際に、オープンでアクセス可能であることと答えました。Chou氏は「80歳のプレイヤーがステージ上で18歳のプレイヤーのようになれない理由はない」と述べます。

ハースストーンの1億人への道はつまずきなしではありませんでした。数年に渡って生きているゲームのバランスをとることはチャレンジです。Jason Chayes氏は”突撃”のメカニズムを思い出しました。ほとんどのミニオンは攻撃するまで1ターン待たなくてはなりませんが、突撃は待つ必要をなくし、驚くべき攻撃を仕掛けます。

“ウォーソングの武将”はハースストーンの初期においては強いカードでしたが、無害なカードでした。自身は非力なミニオンですが、味方のミニオンに突撃を付与しました。ウォーソングの武将の横にたくさんのミニオンをプレイすると、それらは1ターン待つことなく突撃し、敵プレイヤーを即座に倒します。

※最初期の”ウォーソングの武将”の効果は「あなたの召喚するミニオンは突撃を得る」だった

その後、カードのテキストは「あなたが召喚するミニオンが攻撃力3以下なら突撃を得る」に調整されましたが、2015の拡張「ブラックロック・マウンテン」に収録された”ぐったりガブ呑み亭の常連”の登場により再び環境に復帰しました。”ぐったりガブ呑み亭の常連”を増殖させながら突撃させるコンボにより相手プレイヤーに大ダメージを与えることが可能になり、コミュニティから予測可能な講義がありました。

開発チームは30~40回の反復を行い、現在の「突撃を持つ味方ミニオンに攻撃力+1を付与する」という効果に変更しました。

開発初期の段階でさえ、新拡張がより多くの穴を明らかにする可能性があるため、開発チームは様々な設計上の選択肢に取り組んでいました。例えば、プリーストは相手のデッキからカードを盗み出す(※文字通り”奪う”)ことができましたが、開発チームはすぐにそれが両プレイヤーにとって良くないものであると気付き、コピーを手に入れるように変更しました。

トップシークレットとされたハースストーンプロジェクトのロゴ
「Project Pegasus」(プロジェクト ペガサス)

 

「彼らはまだそのカードを持っており、そのコンセプトに沿ってデッキを使い続けることができます」Thompson氏は語ります。「しかし、重要なカードを取ることを中和したため、ゲームをプレイするそこからの10分間を奪うことにはなりません」

デジタルカードゲームであるため、問題は過去に遡って調整することができます。しかしそれは開発チームによる最後の選択です。代わりに、新しいカードで反復しようとし、競争的なレベルを維持するためにスタンダード化されたフォーマットのデッキを使います。

ハースストーンの開発チームにおいても変化はあります。ゲームディレクターだったBen Brode氏の出発は大きな変化でした。しかしSigaty氏は、この変化はあなた達が思っているようなはっきりとした変化ではない、と述べています。

「この製品を定義する人物という人はいません」Sigaty氏は述べます。「常にチームであり、BenやHamilton Chuのような人々がいなくても、チームの皆は素晴らしいセットとカードを作り、素晴らしい決断をし続けます」

ハースストーンは新しいマイルストーンに達しました。カードゲームコミュニティに存在するハースストーンは新しく試されます。より多くのデジタルカードゲームが登場し、業界大手も参入しています。Wizards of the CoastはMagic The Gathering Arenaを立ち上げ、今月末にはDotaカードゲームであるArtifactがリリースされます。

しかし、ハースストーンはこれらの挑戦を歓迎しているようです。

「ブリザードがゲームを作り出す方法は、そのジャンルの中で初めてであるか、または唯一であるかという観点から決して見られたことはありません」Thompson氏は語ります。「私達の意図は、常にそのジャンルにとって最善のものになっていると思うし、ハースストーンは私達が創造に大きな役割を果たした大きなジャンルの一部になり、今日のレベルに達していることを証明し続けるでしょう」