NohandsGamerによる大会デッキ構築ガイド [訳:ラスカル]

NohandsGamerによるコンクエスト構成構築ガイド[訳:ラスカル]

南北アメリカ地域のグランドマスターズとして活躍中のNohandsGamer選手がredditにコンクエストフォーマットでの構成の組み立て方のガイドを投稿しました。自分の練度によるデッキの段階づけや、構成としての戦略、メタ読みなど段階的に記載されています。

このガイドをラスカルさんが翻訳してくださり、またNohandsGamer選手からの掲載許可も得られたため、当サイトに掲載いたします。

ソース:How to build a great conquest lineup

NohandsGamer(著者)

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コンクエストでの優れた大会構成の作り方

コンクエストの大会構成の作り方


過去数年の間にトーナメントで優勝したり、マスターズツアーでTop8にまで到達した構成を数多く組んできました。自分の構成は他の構成によく似ていることもあれば、かなり違うこともあります。人によっては「ベスト」だと思えるデッキを詰め込んだだけの構成を持ち込む人もいますが、それはいささか単純に考えすぎで平凡な結果にしかつながらないと思います。

このガイドでは、私がコンクエストの構成を作る際に使っている方法を、順を追って説明していきたいと思います。

注:コンクエストとは、ハースストーンの大会シーンでよく利用される、勝ち抜け式の対戦方法です。複数のデッキを持ち込み、全てのデッキを使って相手に勝利する必要があります。

ステップ1:自分の練度を見極める


構成を組む上で最も重要なポイントですが、おろそかにされがちなポイントでもあります。

reddit(訳者注:海外のネット掲示板)のハースストーンスレッドのあちこちにいるブロンズランクのプレイヤーからも分かるように、ハースストーンは高い技術を要求されるゲームです。大会で勝ちたいなら、最初に考えるべきは高勝率のデッキで上振れを願うことではなく、どうやって相手に勝つかということです。

低い勝率のデッキを使っていい結果を残すプレイヤーが度々いますが、これはそのプレイヤーがそのデッキに対する理解度が高く、また対戦相手もそのデッキとの対戦経験があまりないからです。

ここから私が言いたいのは弱いデッキを使えということではありません。勝率48%のデッキでも長く練習してきた理解度の高いデッキなら、弱い相手にラダーで20回しか使ったことがない誰でも知っている最強のデッキを使うよりも良い結果になるということです。

私の経験からプレイしたデッキを4つに分類したいと思います。

S Tier:250戦以上

このデッキを完璧にマスターしたと言える状態です。レジェンド1位、少なくとも5位くらいなら到達しているかもしれません。データ上不利とされるマッチでも全マッチ有利だと感じると思います。

A Tier:100戦以上

かなりデッキを理解したと言える状態です。適切なメタで回せば定期的にレジェンド25位を取れるでしょう。メタ的にあまり立ち位置がよくない時でもtop100にはいられるでしょう。全マッチアップをよく理解しており、特殊な状況も経験してきています。自然には出てこないようなプレイや小技も知っている状態です。経験したことのない場面でもそれほどひるまずに対応できるでしょう。

B Tier

少しはデッキを回してだいたいの使い方は分かるが、変わった状況ではどうプレイするかよくわからない状態です。普通に行けば上手く扱えそうでも、少し状況が変わると負けてしまい、いまいち敗因も分からないでしょう。とは言うものの、下手でもないし特別上手くないといったところでしょうか。

C Tier

ほとんど使ったことがないか全く使ったことがない状態です。ランク戦で相手として対戦したことはあるかもしれません。デッキの使い方が分からないためミスをたくさんするでしょう。1ターン目にコインを温存するか使うか、どれだけフェイスに行き盤面を取るのか、経験がなくわからないので、プレイする中で自分のプレイが間違っていたことに気づくことが多いです。

ステップ2:準備


大会に出る前に時間が十分あるなら、メタに存在する強いデッキを把握するのがいいでしょう。大会には少なくともB Tier以上のデッキを持ち込みたいところです。そして大会構成上必要なら、持ち込む上で不安にならない程度には練習をしておきたいところです。

大会1週間前になりラインナップが決定したら、持ち込むすべてのデッキでランク戦の最新デッキと対戦して練習しましょう。

私が思うに、多くの人が公式大会でいい結果を残せない最大の理由の1つは、1週間前にC Tierだったデッキを持ち込んでいることです。私の場合、C Tierのデッキは1つしか持ち込まず、なおかつマスターズツアーの1週間前から練習したデッキに限ります。

コンクエスト構成の戦略

いよいよここからが面白いところ、構成の戦略です。以下に私がコンクエストで使った構成を簡単にまとめます。これらの戦略は他の戦略と組み合わせて使うこともできます。

王道構成

もっとも勝率の高いデッキを持ち込んで、一番相性の悪い相手をBANする方法です。この構成はけっこう良いことも多いですが、最高と呼べるほどではありません。

メリット:ランク戦で練習するのが簡単。ランク戦でも大会でも使われるデッキであるため、リストも最適化されている場合が多い。
デメリット:構成が予想されやすく、強い相手は対策してくる。本当に強いデッキを持ち込んでもBANされるかメタられる危険がある。

BAN戦略

特定のデッキをBANすることがメリットになるデッキを4つ持ち込む方法。

メリット:相性の悪いマッチを減らせるため、ランク戦では使いづらいデッキを持ち込める。さらに、特定のマッチアップをプレイすることがわかっているため、ランク戦では必要なカードでも、不必要なカードを抜くことができる。
デメリット:よくありますが、BANする予定のデッキの他に相性の悪いデッキも持ち込んでいた場合、かなり相性の悪い試合を強いられる。

例:前回のマスターズツアー(マスターズツアー・モントリオール、9/12 ~ 14開催)では、私は激怒ウォリアーを持ち込みましたが、今はドルイドとプリーストがいるせいであまり強くありません。しかし、ドルイドBANができれば強いデッキとして扱えます。

ハードメタ構成

ランク戦では使いづらいが特定の1デッキには強いというデッキ4つを持ち込む構成。これは、全てのデッキが一度は勝たなければならないというコンクエストのルール上、可能になる戦略です。

理論上、もし特定のデッキに勝率100%・他の全てのデッキに勝率0%となるような4デッキを使えたら、相手がターゲットのデッキを持ち込んでいれば常に勝利できます。これは1つのデッキでは1勝しか出来ないのに対して、1つのデッキで複数回負けられることから成立しています。

メリット:うまくやれば、楽に勝てる試合が大きく増えるので、大会で大幅に優位に立てる。
デメリット:メタ読みを間違える、もしくはターゲットのデッキを持ち込んでいない相手に運悪く当たってしまうと、ほとんど何も出来ることがなく壊滅的な状況になる。

例:メックトゥーンデッキ4つを持ち込むとコントロールデッキ全般には常に勝てます。
もしくはマスターズツアー・モントリオールでMonsantoやETCが持ち込んだような武器破壊7枚構成を持ち込めば、爆弾ウォリアーにほぼ勝てます。

ソフトメタ構成

ハードメタ構成に似ていますが、それほど極端ではありません。通常、人気が高いヒーローに対して相性の良いデッキを持ち込む方法です。

たいていの場合、最強のデッキや最も人気のあるデッキはハードメタできません。だからこそ最強のデッキと言われているわけです。大きく相性の悪いデッキが存在する場合、頂点の座に居座り続けることができないのはよくある話です。

これら4つがコンクエストの構成を作る上で、私が主に使う戦略です。しかし、現実的には2つ以上の戦略を組み合わせて使うことも可能です。1つのデッキをハードメタした上で他の1デッキをソフトメタしたり、全て最強のデッキを持ち込んだ上でBANを考えて似たような弱点を持つデッキでまとめたりすることもできます。

ステップ3:メタ読み


構成を作る上で最も重要な技術であり、新環境で最も難しい技術です。

新環境では、他のプレイヤー達が持ち込むデッキを上手く読めるプレイヤーが大幅に有利です。有名なプレイヤーである私は、メタに影響する恐れがあるので、自分の読みを明かさないようにしなければいけません。

段階に分けてメタ読みのやり方を書くのは自分にはかなり難しいですが、この文章の最後に、過去自分が使った構成の例を挙げてみたいと思います。

テックカードの微調整

ランク戦で使われているデッキをそのまま持っていくのは、大会には最適ではありません。ランク戦と大会では存在するデッキの割合が大きく異なるのがその理由です。ランク戦には5%しか存在しないデッキが、大会では全ての構成に採用される可能性があります。そのデッキをBANしない場合、33%の対戦はそのデッキと戦うことになります。そのため、そのマッチアップで有効なカードはより重要になり、有効でないカードは邪魔になります。

例:武器を使うデッキを予想して酸性沼ウーズをデッキに入れる。

酸性沼ウーズ Acidic Swamp Ooze

Step1~3を結合する

どのデッキが強くて、どのデッキがまあまあなのか分かったはずです。メタを読んだらいよいよ構成を組む時です。構成を組む上でうってつけなのがoffcurve(http://offcurve.com/masterstour)です。

このサイトで現在主流の戦略や何が人気で何が強いのか把握することができます。ここから自分の得意なデッキを採用するなどして構成を組みましょう。

構成の良いアイデアがあっても、弱点があるのはよくあることです。最高の構成のアイデアがあったとしても、そのうち2デッキは上手く使えないデッキかもしれません。私はマスターズツアーの直前に2デッキをマスターしようとしましたが、それは災いのもとでした。もしくは良いアイデアがあっても、大会直前でとあるデッキの人気が上がると台無しになるかもしれません。自分の長所、短所を知り、メタを読んだ上でどの構成・デッキがベストか判断しなければいけません。これは大変なことですが、全員に求められます。誰かの構成をコピーしても自分の得意不得意が考慮されていないこともままあるでしょう。

過去の公式大会で使用した構成例

HCTフィラデルフィア(訳者注:2018年12月15日~17日開催、成績:優勝)

偶数パラディン、挑発ドルイド、キングスベインローグ、キューブウォーロックを持っていきました。

マリゴスドルイド、スペルハンターの人気が高いと読んで、この両方に強いデッキで組みました。私の構成はその両方のデッキに対して非常に有利でした。

一方で、奇数パラディン、シャダウォックシャーマンには弱い構成になっています。しかし、前者はアグロデッキで後者はコントロール寄りのデッキなので現実的にその両方を持ってくるプレイヤーはいないだろうと考え、どちらかをBAN出来ると思いました(決勝の相手は両方使っていましたが)。多くのプレイヤーがマリゴスドルイドを持ち込んでくるのは読み通りで後半の試合で大幅に優位に立てました。面白いことに、負けた試合は全てDay1で、後半になるにつれて強いプレイヤーと当たることになりますが、どんどんドルイドと当たるようになっていきました。

マスターズツアー・ロサンゼルス(訳者注:2020年3月21日~23日開催、成績:Top8)

誰もがランク戦でウォリアーとローグを使っている環境下での大会でした。メイジはこの両方に有利でしたが、ハンター相手に壊滅的でした。でも、大会ならハンターはBANできます。そのため、構成を作っている時、多くのプレイヤーがメイジを持ってくるだろうとフレンドと話し合っていました。メイジを倒す構成を導き出そうとしましたが、問題はハンターBANすると他のマッチアップを犠牲にする以外にいい方法がないことでした。結局、ハンターとメイジを持ち込むのが無難なように思えました。

ここから、最強デッキを使うという観点から、残りはローグとウォリアーを持ち込むのが良いと言われるでしょう。しかし、個人的な見解としてはいくつか問題があるように思えました。

ローグについては、全プレイヤーがミラーを制するためにローグをメタっていました。全員がブームピストル無頼を2枚積みしていました。そのため、ローグは非常に強力でしたが、明らかにターゲットにあれ、構築も対策されてきたでしょう。

ウォリアーについては、すごく好きでしたが、ドルイドに弱い気がするのが心配でした。また、ハンターはウォリアー相手を最も得意としており不利なので、BANします。かなりの回数ランク戦でウォリアーを回していましたが、持っていくのは得策でないと判断しました。

またドルイドもランク戦で多く回しており、Bo3で人気なウォリアーとローグに対して相性が良いです。しかし、メイジが多いと予想していたので、持っていくのは得策ではないと感じていました。しかし、Viper(訳者注:ドイツの強豪プレイヤー、2019世界選手権準優勝)が生き息ドラゴンブレスを入れてプレイしているのを見て、メイジとの相性を判断しました。フレンドと練習した結果、ルナのポケット銀河系を最速で打たれても全勝できました。実際には凍結で足止めを食らわなければ、序盤からテンポで押し切ることができました。

最後のデッキはコンボプリーストです。自分にとってS Tierと呼べるデッキです。しかし、ランク戦ではハンターが多いため使っていませんでしたが、ハンターBANが有利に働くと思いました。さらに、ローグとウォリアー相手は五分五分でドルイドとメイジにはかなり有利です。

一見最強の2デッキを持ち込まない自分の構成は変に思えるかもしれませんが、最終的にはTop8に残りました。ここから、構成を作るにはソフトメタ構成、メタ読み、BAN戦略、テックカードといった全ての要素が関わっていることが分かると思います。自分の中で傑作と呼べる構成です。

終わりに


これらだけが完璧な戦略ではありませんし、ひとつの戦略があれば皆それを対策してきます。自分の強みを発揮しましょう。自分が完璧ではないことを自覚しましょう。でも、完璧である必要はありませんし、完璧な人は誰もいません。
大会頑張ってください!