【開発者インタビュー】Chris SigatyとDean Ayalaへのインタビュー

Blizzcon2018にて、HSReplay.netチームが開発者のChris SigatyとDeanAyalaにインタビューを行いました。インタビュー記事を翻訳して紹介します。(一部省略・意訳を含みます)

原文:Interview with Hearthstone Executive Producer Chris Sigaty and Senior Game Designer Dean Ayala


ー 早速始めましょう。Chris、あなたはハースストーンの新しいエグゼクティブプロデューサーです。あなたはStarCraftⅡ、そしてHeroes of the Storm(以下HotS)のレジェンドです。

Chris:私はそうは思いません(笑)

ー 今回あなたはハースストーンに移って来ましたが、おそらく慣れたタイトルではないと思います。これについてはどう思いますか?

※Chris Sigaty氏は、これまでStarCraftⅡのリードプロデューサー、HotSのエグゼクティブプロデューサーをされていましたが、この度ハースストーンのチームに移ってきました。

Chris:素晴らしいことです。私はハースストーンの初期から遠くから見ていたので、チームへの参加は私にとって頭の下がるものです。ハースストーンは、最初はいくつかの試練がありました。私達がハースストーンを打ち上げることを知る前にチームは多くのアイデアを模索していましたが、誰もそれが大きなチャンスになるとは思っていませんでした。しかし、ハースストーンに触れて、5分遊ぶとそれが素晴らしいゲームであることに気づきます。

リリースされると、多くの人が同じ様に感じたことを知り、感動しました。私がStarCraftⅡやHotSのチームで働いていたとしても、いつもハースストーンのプレイを続けていました。私はハースストーンチームが素晴らしいカードやセットについて考えているのを見るのが好きでした。だから、今回の機会の話があったとき私が持っていた疑問は、当時いたチームについてでした。私はRTS(リアルタイムストラテジー)を愛していてチームに所属していましたが、次のことを考えるように時間をかけることも大好きです。ハースストーンチームに参加したのは4.5ヶ月前ですが、とても素晴らしいものです。

ー では、もう4ヶ月も在籍しているんですね?

Chris:はい、6月からです。そして実際にチームと会って活動する機会もあります。素晴らしいチームなので、その一員になれたことを嬉しく思います。

ー Dean、Chrisのような人がチームにいるのはどのような影響がありますか?

Dean:社内で長い期間活躍してきた方がチームに加わるのは、とてもいいことです。私達はChrisが来ることを知っていましたが、親しみやすい人が仲間が増えるのであればそれはいいことです。チームのリーダーシップの意味では、依然としてこれまでのメンバーがカードやシステムについて動いています。私達はChrisの参加をとても喜んでいますし、チームで働く人々との一貫性も持っています。

Chris:カードセットやデザインについては既に素晴らしいチームが構築されているため、チームに参加してすぐの私は何もしませんでした(笑)チームは既に素晴らしい活動をしているので、私は自分自身を理解し、私にとって新しいことをより深く知ろうとしています。

ー 話題をゲーム内容に移します。最近のパッチで含み笑う発明家が変更されました。含み笑う発明家はメカメカ大作戦に収録された数少ないメタへの影響の大きいカードでした。
ワタリガラス年最後の拡張である天下一ヴドゥ祭は、これまでと比較してどのようなパワーレベルで見ていますか?また、スタンダードセットとして考えてどのようなパワーレベルのアプローチをしますか?

Dean:天下一ヴドゥ祭は大きなインパクトをもたらすと期待しています。私達は全ての拡張で新しいアーキタイプの生み出すこと、過去のカードとの組み合わせをサポートすることをゴールにしています。月を食らうものバクゲン・グレイメインを見ると、たとえ1枚のカードでも各クラスのプレイに大きな影響を与えました。パラディンを見てみると、それまでとは全く異なっていますが、使用しているカードのパーセンテージから見てみると平均より多少低いかもしれません。私達がトライしているのは、新しいカードの使用率を上げ、プレイヤーがログインした時のゲームの感触を変えることです。これまでの拡張をサポートすることも我々がしようとしていることです。

天下一ヴドゥ祭では、全ての精霊とロアが一緒に機能することで、これまで模索されていないアーキタイプを生み出すのがとても楽しみです。例えばウォーロックは、入魂のようなカードでハンドバフシナジーを発揮してきましたが、それに偏ったアーキタイプはありませんでした。だから、全てのクラスにデッキ構築のベースとなるカードを与え、それが新しいタイプのデッキを作るのに役立つことを願っています。

ー 最近のバランスパッチに話を戻すと、コミュニティはドルイドのカードに変更がないことに驚きました。ドルイドのカードはナーフの案にはありましたか?

Dean:私達は様々なカードについて沢山の話をしました。変更しなくてはならないカードについて話したとき、拡がりゆく虫害はその対象でした。バランスの変化を考えるときに、考えるべきことは、問題があるだけでなくそれが時間が経つにつれて悪化するか、良くなるかです。それには基本的には統計データが役立ちます。しかし、統計を見ても、それが面白いか面白くないかはわかりません。なので数字や統計だけでゲームを見ることはできません。しかし、何かが継続し続ける可能性があることをお知らせすることはできます。

プレイヤーがあるデッキが統計的に非常に強力で、人気もあるということにコメントし、これを倒せないと仮定することがあります。弱点がないので、それを打ち負かすデッキが組めないということです。ドルイドを見てみると、統計的に強いドルイドのデッキは、そこまで普及しておらず、当時のデッキでは4番目に多かったデッキでした。

ー そうです。私達が尋ねたのは、私達のデータを見るランク5からレジェンドにおいて、野生の繁茂滋養なぎ払い枝分かれの道ジャスパーの小呪文石といったカードは95%以上のドルイドのデッキに採用されています。現在ドルイドには強いデッキタイプが4つあります。コミュニティが感じているのはそういう理由ではないでしょうか。

Dean:変更しようとするとき、その変化がプレイヤーにとって楽しいものになるだろうか?と考えます。実は私達は様々なテストプレイをしています。ドルイドが弱いパワーレベルだったらどうか?もです。メタゲームがどの様に回るかも調査してみると、ドルイドはアグロ相手のストッパーになっているようです。もしドルイドへ変更を加えたら、と考えた結果、それはとてもネガティブなものになる可能性があると考えました。

もっと言えば、人々がどのような種類のデッキをプレイしているか、異なるアーキタイプやクラスの人口について考えました。実際に私達が加えた変更によって最良のメタゲームを生み出すと思いましたし、今は比較的ポジティブな状態です。だから、私達はかなりハッピーです。

ー 新しいキーワード”血祭”について話しましょう。メイジの爆発のルーンで似たような効果を見ました。開発チームはなにか特定のカードからのフィードバックを受けて”血祭”をデザインしましたか?また、これはウィッチウッドにおける木霊のようなこの拡張特有のものですか?それとも今後も多くのカードが登場しますか?

Dean:キーワードそのものについては、拡張固有のキーワードとして扱いがちです。というのも、ハースストーンにログインして遊んでくれることが重要で、全てのキーワードを理解するのが重要ではないからです。なので、私達はキーワードをスタンダードのサイクルと同じペースで紹介する傾向にあります。全てのキーワードはワイルドには存在しますが、ワイルドはある程度慣れたプレイヤー向けです。だから私は恐らく拡張と一緒にローテーションするだろうと推測しますが、プレイヤーのフィードバックは大きな役割を果たします。もし”血祭”が、これまでの使われていた効果を示すものであれば、そのようにするかもしれません。

爆発のルーンについて話がありました。実はそれは最初バージョンの”血祭”です。最初の”血祭”は、与えた超過ダメージを敵ヒーローに与えるものでした。それは面白かったですが、皆が速攻で相手を殺すデッキ(アグロデッキ)に辿り着きました。だから”血祭”でカードを引いたり、もう一度攻撃をしたり、様々な効果をもたせ、様々なデッキに入れるようにしました。もちろんゲームプレイと拡張のテーマの両方の視点から、よりグラディエーターのように”血祭”をテーマにしたのもあります。

Chris:私が重要だと思ったもう一つのことは、開発チームが”血祭”をどのように進化させたか、ということです。超過ダメージを敵ヒーローに与えるという効果は面白いものでしたが、現在の効果は”血祭”の効果を発動させるためにどのように攻撃するかを考える必要があります。そしてそれはハースストーンにおいて重要な要素だと考えています。どの様にプレイするか考えることが、です。ヒーローへの超過ダメージはあまり多くの思考を必要とせず、現在の効果によりもっと面白いものになると思います。

ー 確かに。それはプレイヤーができるだけ効果的に発動できるように考えるようになりますね。

Chris:そうです。プレイヤー達はそれを考えるようになります。

ー 最近ハースストーンの2つの競合の話が出ています。ハースストーンは、過去にも競合相手がいましたが、実際にはそれほどの話にはなりませんでした。カードゲームにおける競争についてどう考えていますか?戦略に影響はありますか?それらは競合になると思いますか?

Chris:そうですね、それらは確かに同じカテゴリに入っているので、ある程度の競争があります。しかしそれは、私のために考えるとハースストーンが達成したことについて安心感を覚えます。以前はカードゲームはニッチなジャンルでしたが、重要なジャンルであると世界に証明しています。開発チームは実際にコレクタブルカードゲームや戦略ゲームの可用性と関心を広げていきたいと考えていました。だから、ハースストーンは本当にうまく行っていて、それは素晴らしいことです。

競合他社が登場する限り、私達は追いつかれないように改善し続けていくので、良いことだと思います。他に何も出てこなかった場合、私達は同じようなパターンを何度も繰り返すことが用意になります。常に私達自身が先に推し進めていき、そしてそれを確認したいと思います。

ー カジュアルなプレイヤー、プロプレイヤー、ハードコアプレイヤーどこに多くの焦点が当てられていますか?

Chris:ご存知の通り、ハースストーンは長い道のりを進んできました。遊び方は簡単、でもマスターするのは難しいというのはブリザードの永遠の真言です。シンプルなゲーム性と熱狂する楽しさです。私達は、専門家レベルのプレイヤーである人々のニーズに応え続けながら、この道のりを歩み続け、幅広くしていきたいと思っています。

ー ハースストーンのようなゲームのエグゼクティブプロデューサーとStarCraftⅡやHotSとはどう違いますか?

Chris:私は4年前にエグゼクティブプロデューサーになりました。エグゼクティブプロデューサーになるときチームの皆に「心配するな、なにも変わらない」と言ったことを覚えています。もちろん全てが変わりました(笑)エグゼクティブプロデューサーとプロダクションディレクターの違いを説明することから始めるのがいいかもしれません。以前の私のキャリアは、常にゲームの開発を見て、アーティストがやっていること、デザイナーがやっていること、持っている情報などを確認していました。

野球と比較しましょう。あなたはプロダクションディレクター、ゲームディレクター、ゲームデザイナーなどといったコーチを抱えています。かれらは打順を決めたり、ピッチャーを決めたり、いまどんな球を投げるかなどを決定します。エグゼクティブプロデューサーは、球団のゼネラルマネージャーに似ており、ビールやホットドッグの販売が順調かどうか、特定の日のチケットの売上はどうか、新しい選手へのお金はどうか、などを考え、それは遥かに広い視野を持っています。

ハースストーンだけでなく、ハースストーンのようなフランチャイズには多くの類似点があります。私にとって多くの学びがありました。私はゲームについて知っていますが、Deanが知るレベルではありません(笑)しかし、それは私がそのようい広い視野を見ているという点で似ています。

ー 素晴らしい。ありがとうございました!