天下一ヴドゥ祭のカードデザイン

天下一ヴドゥ祭で実装されたユニークなカード達について、Peter Whalen氏とDean Ayala氏がIGNのインタビューに答えました。

どんな構想の下にカードが作られていたのかを知ることが出来る、素晴らしい内容になっています。

原文:


IGN:ズルジンについて詳しい話をする前に、デスナイトからそれ以降のカードまで、あなたがヒーローカードのデザインについて学んだこと、そしてそれがどのように今後の展望につながるのか教えてください。

Peter Whalen:最も大きな学びは、人々がヒーローカードを愛するということです。騎士団でデスナイトカードが登場した時、皆それらを本当に好きになってくれました。それからハガサやドクター・ブームが登場し、また皆興奮していました。DKスロールのようにあまり多くプレイされていないものでさえ、人々は大きな興奮を覚えます。

デザイン面で学んだことは、ヒーローカードにより無限のリソースを持つものはかなりイライラさせるということです。DKレクサーやDKジェイナのようなカードは非常に強力ですが、15ターンから20ターンのゲームになって、しかも負けると非常に嫌な気持ちになります。そのためこのような経験を少なくしようとしました。ハガサとドクター・ブームはどちらもランダム要素が大きめです。ハガサはランダムな呪文を生み出し、ドクター・ブームはヒーローパワーがランダムで、毎ターン変更します。ヒーローパワーがバリューを生み出す方法もランダムで、メカを発見するという効果です。

ズルジンはそれらとはかなり異なるカードで、多くの力をヒーローパワーに注ぐのではなく、カードパワーの80%以上を雄叫びに注いでいます。ズルジンの雄叫びは本当に強力で、狂っています。彼は斧で全てを殺し、多くの獣を召喚し、多くの罠をセットします。それに比べるとヒーローパワーは非力なものになっています。

ズルジンの他のバージョンについては、だいぶ異なるものになっていました。しかし最終的に私達が選んだのはスペルハンターに最後の叫びを加え、面白くするというものでした。今はコボルトセットのスペルハンターのカードがスタンダードに存在する最後の拡張セットです。だから私達はハンターのクールなヒーローであるズルジンを欲しました。

IGN:他にどのような案があったか教えてもらえますか。

Peter Whalen:多くのことを試しました。あるときは雄叫びが「デッキから武器を1枚引いて装備する」というものでした。なぜなら彼は狂戦士だからです。そしてヒーローパワーは、最初は1ダメージを与え、ヒーローがダメージを受ける度に与えるダメージが上がるというものでした。あなたがズルジンであれば、あなたは狂戦士になります。対戦相手が7体の新兵で攻撃してきたなら、あなたのヒーローパワーは8ダメージを与えます。それは非常に強力なものだったので、最終的なカードデザインからは外れました。

IGN:奇数パラディンへの良いカウンターですね。

Peter Whalen:ある程度はそうですね。また、あなたは武器を得ていますので自分からダメージを受けることもできました。他にも、次のヒーローパワーは受けたダメージ分のボーナスを得るというバージョンも試しました。時間が経つほど強くなる、というバージョンも試したかったのでヒーローパワーを使う度に強くなる、というのも試しました。これらは全て特に問題になったわけではありませんが、ズルジンをプレイした後に「このヒーローパワーは相手を倒すのに十分なダメージを与えられのるか?」という疑問が残りました。これについては悪い結果になりました。あなたがデッキに入れたカードではなく、ヒーローカードだけで残りのゲームを勧めていくのは楽しいゲームプレイとはいえません。

そこで私達は全く異なるバージョンのヒーローカードを試してみました。私達は雄叫びでこのゲーム中に使用した数のランダムな呪文を唱えるレジェンドミニオンを知っています。ただ、そのミニオンの問題はスペルハンターに入れることができなかった、という点でした。なぜならスペルハンターデッキはミニオンを入れないことを強制したからです。だから私達はズルジンを作り、そしてうまく機能することを確認しました。

ズルジンは呪文ではなく、またデッキに2枚入れることはできません。そのため繰り返し利用することは出来ません。かなり強力な雄叫びなのでヒーローパワーは大人しいものにしたかったのです。そこでベースとなるハンターのヒーローパワーを維持したまま、他の対象にも2ダメージ与えられるようにしました。

IGN:ズルジンがどのようにデッキに使われるようになったか、それがどのように時間的に変化してきたのかを見てどう思いましたか?特定の呪文は裏目になることもあります。また、それまではあまり使われなかった圧し潰す壁のようなカードも見かけるようになったと思います。

Peter Whalen:とても良かったと思います。また、私達のテストプレイも反映されています。私達が最初にしたことは「自分のデッキの全ての呪文をプレイしてからズルジンをプレイした場合に、ほんとにすごいことになるのはどの場合か」です。それを踏まえて、裏目になるカードを少なくして圧し潰す壁のような相手のみを対象としたカードを採用したタイプにたどり着き、そしていくつかの裏目になるカードも採用した他タイプを作りました。

そのため、プレイヤー達のデッキが私達のテストのミラーのようなのを見るのはとても楽しいことでした。そして実際にはミッドレンジ型のハンターにズルジンが採用されるなど私達のテストとは異なるタイプも存在しています。

IGN:ヒーローカードは拡張毎に1枚と決まっていますか?それとも決まっていませんか?

Peter Whalen:実験を続けると思います。我々は最初に9枚のヒーローカード、次は0枚、そして3セット連続で1枚のヒーローカードを実装しました。「それが先例です。それが100%です」とは言うつもりはありません。私達は実験を続け、拡張をにおける疑問のために正しいことならなんでもするつもりです。

 

IGN:ジャナライは私の好きなカードです。ジャナライについて何かコメントはありますか?

Peter Whalen:ジャナライは素晴らしいカードだと思います。私たちは炎とヒーローパワーに関するものをメイジに与えたいと思い、精霊と放火魔とジャナライにヒーローパワー関係の能力を付与したのです。

以前は呪文ダメージがヒーローパワーに影響を与えるという能力も考えていました。そのため、ジャナライは「呪文ダメージ+3、呪文ダメージはあなたのヒーローパワーに影響する」という効果であった時期もあります。結局ヒーローパワーに関する能力は精霊に移りましたが、呪文ダメージ付きのカードと精霊を運用するのは難しく、実現することはできませんでした。

その後、ジャナライの効果を下記画像のものに変更しました。「このゲーム中あなたのヒーローパワーで倒した全てのミニオンを召喚する」(※)というものです。それはとても素敵なものでしたが、2つの大きな問題を抱えていました。一つは、自分のミニオンを自分で倒すというものです。これは本当に、本当に、本当に良くないものでした。もう一つは、全てのミニオンを覚えておく必要がある点です。これはお互いにとってストレスになりました。

※画像のカードテキストには「このゲーム中」という表記はないが、原文ではそう述べられている。

 

IGN:なるほど。確かに週末預言者をヒーローパワーで倒したくなくなりますね。

Peter Whalen: そうです。倒したミニオンは忘れますし、忘れていたことに気が付くとがっかりするのです。なので、私たちは6,7,8コストのカードで中盤以降に価値を出せるカードを見つけようと思いました。盤面に存在感を与えるようなカードです。

そこで「WarcraftとHearthstoneの歴史から考えられる炎といえばなんだろう」と考え、このアイディアを思いつきました。

「ラグナロスが戻ってきたらどうなるだろう」

ラグナロスは炎を象徴する完璧な存在でした。その後のテストプレイで私たちはこう叫んでいました「これだ!これだ!完璧だ!素晴らしい!これが私たちが求めていたものだ!」

 

IGN:私はジャナライが本当に大好きです。天下一ヴドゥ祭リリース直後はジャナライで遊ぶのがとても楽しかった。メイジのカードにはほかにもお気に入りがいて、それが呪術師マラクラスです。

Peter Whalen: 私の好きなカードでもありますよ。

IGN: 本当?

Peter Whalen: もちろん。私も大好きです。私たちは新しいカードデザイナーに「メイジのカードを作ってくれませんか。あなたなりにメイジをデザインしてみてください」と伝え、彼に依頼しました。その彼が作ったカード群の中にマラクラスがあり、開発中からデザインはほぼ変わっていません。

Peter Whalen:ハースストーンだから、デジタルカードゲームだからできるカードです。このカードはプレイヤーのマリガン方法を変えたり、キープしたカードによって戦略が変わるカードです。それはとても素敵なことで、アイデアは本当に素晴らしいものです。

IGN:このカードが活躍するにはどんなことが必要だと思いますか?それとも常にニッチなカードの一部であると思いますか?

Peter Whalen:それはメタゲーム的な話になります。遅いゲーム展開である環境なら、マラクラスが輝くことができます。知識の古代樹は非常に強力なカードでした。マラクラスもそうなる可能性があります。特にデッキが切れそうなときにバリューを求めるのなら、マラクラスはデッキを引くことなく追加のカードを生み出すことができるため非常に強力です。ガジェッツァン環境のときのレノメイジのようなデッキでは活躍できるかもしれません。

Dean Ayala:マラクラスを入れるデッキを考えるなら、リソースを必要とするコントロールメイジのようなデッキです。そしてそのデッキは今DKジェイナを採用しており、追加のリソースをあまり必要としていません。ジェイナが追加のリソースを生み出すからです。

そしてDKジェイナがスタンダードを去る時、メイジの次のデッキタイプに多くの余地を与えると思います。それは他のDKについても同じでしょう。カードセットがクラシックと基本だけだったとき、イセラを使用するだけで勝っていた試合もあります。イセラはゲームに勝つ1つの方法となっていました。

そして今、スタンダードには6つのセットが有り、これら全てにクレイジーなカードがあり(DKの多くがそうです…)、様々なデッキが活躍する今の環境は本当に素晴らしいものです。これらのリソースを生み出すカードがスタンダードを去ると、環境は大きく変わるでしょう。マラクラスのようなカードは、3,4枚のカードを生み出すという効果に価値がある環境になれば使われるようになると思います。特にハンターとメイジがDKなしで戦っているときにリソース生成手段を持っていれば、このカードで勝つようなシナリオがあるように思えます。

IGN:リソース確保の観点から「このカードを除いて」の部分をなくすという考えはありましたか?

Peter Whalen:十分なテストプレイを行うまで、そのバージョンが存在していました。ただ、かなりイライラするカードだったことを覚えています。リソース勝負になる対戦となった場合、マラクラスを何度も何度もプレイされるのは、かなりイライラさせられます。毎ターン、マラクラス+フロストノヴァと動かれたらそれはもう大変なものです。

Dean Ayala:マラクラスにとって最も多くテストプレイを費やしたのは、コインを含めるかどうかについてです。ゲームが始まり、マリガンを終えた後、最初のカードを引いた時、なにがオープニングハンドを意味するでしょうか。コインを含みますか?それとも含みませんか?私達はその上で多くの試行を繰り返しました。ただ、最終的にはいいところに落ち着いたと思います。

 

 

IGN:ドルイドのゴンクについて話しましょう。比較的にニッチなカードですが、いくらかのプレイヤーが凄まじいことをしているのを確認しています。

Peter Whalen: 当初は「獰猛セット」というのを考えていました。飛び掛かり、獰猛な急襲兵、そしてゴンクです。ドルイドの精霊は「あなたのヒーローは疾風を持つ」という効果を持っていました。

 

IGN:それは本当ですか?

Peter Whalen: その時のゴンクの能力は「ヒーローが攻撃し、ミニオンを破壊した場合ボーナスを与える」というものでした。そのボーナスが装甲を与えるものだったか、なにか他のものだったかは覚えていませんが、それとシナジーを持つため精霊でヒーローに疾風を与えました。ただ、それを実際に実行するには多くのリソースを費やすため、精霊の効果はドローに変更しました。

 

IGN:ドルイドの攻撃力をアップしてダメージを与えるというコンセプトはどこから来ましたか?

Peter Whalen: コボルトセットではガーディアン(守護者)というファンタジーをイメージしました。そのための装甲シナジーをコボルトセットに組み込み、ウィッチウッドセットでそれらをサポートするカードを追加しました。そして天下一ヴドゥ祭のドルイドのファンタジーを考えたとき「猫フォームになり敵を引き裂く」というアイデアが生まれ、現在の精霊や他のカードのコンセプトに繋がりました。

Dean Ayala:ゴンクにとって世界樹の小枝が存在するのは少し残念なことです。世界樹の小枝を装備して、ゴンクと飛び掛かりを使うと相手の盤面のミニオンをクリアしながら10マナ得ることができます。そのためゴンクは重いカードになる必要がありました。

 

IGN:パラディンのシャヴァーラと精霊はどちらが先に生まれましたか?

Peter Whalen: シャヴァーラが先に生まれ、それに合う精霊を考えるのには時間がかかりました。

シャヴァーラのために多くの呪文がデッキに入ると想定されました。当初考えられていた精霊は「あなたの呪文は2回発動する」というものです。これはあまりに強かった。報復の怒り強すぎました。相手を16回攻撃するよりも盤面で多くの価値を生み出して欲しいと思い、トラを生み出す方向に変更しました。

IGN:シャヴァーラには開発中大きな変更はありましたか?

Peter Whalen: 少し変わりました。あるときは30マナでしたが、聖なる怒りの効果があまりに極端すぎると思ったので25マナに変更しステータスも変更しました。

Dean Ayala:9/6か何かだったと思います。シャヴァーラはいつも強力でした。剣竜騎乗を持っているパラディンは12マナを簡単に使うことができるからです。シャヴァーラを使ってOTKのようなことをしている人たちがいます。シャヴァーラはこのセットの私のお気に入りのカードでした。リリースから少し時間が経ちましたが、今でもお気に入りのカードです。

IGN:今の環境では、ロングゲームになることがよくあります。あなたがシャヴァーラをデッキにシャッフルし始めたら相手にとってのカウントダウンです。ホーリーラスパラディンやシャヴァーラのテストはしましたか?

Peter Whalen:シャヴァーラではたくさん遊びました、とても楽しかったです。ディーンが言ったとおりセットの中で本当に好きなカードです。また、Blizzardの他のチームのメンバーからも良い反応が得られました。ホーリーラスコンボについては、ディーンが今日ホーリーラスコンボで殺害した人数をホワイトボードに記録していたので、ディーンに話をさせてください。

Dean Ayala:(現在はこの通りではありません)溶岩の巨人はワイルドのカードとなりましたが、デッキに4~6枚の25~35マナのカードを入れられる環境に聖なる怒りを置いておくのは非常に危険です。魔力の巨人も実は35マナとなっていたことがあるのですが、流石に変更しました。もしあなたがパラディンをプレイしていて、聖なる怒りのプレイにより相手ヒーローに30ダメージ与えるのを祈るのであれば、それは適切な環境とはいえません。

しかし、シャヴァーラが35マナだったら環境が壊れる危険があります。25マナなら、パラディンの高コスト呪文を作る妨げにはならないと思います。また、毎ゲームシャヴァーラのコストを0にするのは簡単ではありません。25コストというのは適正な数だと思います。

IGN:ゲームをプレイしてみると実際に25マナのカードが0マナになるので驚いています。25マナは適切でしょう。

Dean Ayala:それは遅い展開で起こります。8ターン目に起こる事象ではありません。シャヴァーラは、ミニオンを破壊しながら回復することができます。それだけでも、とてもいいカードでしょう。

 

IGN:ジカールについてはどうですか?

Peter Whalen:パラディンの回復のアーキタイプを作りたかったのです。それはパラディンにとって意味のあることでした。これは、World of Warcraftとハースストーン両方からコアとなるファンタジーの一部となります。コボルトセットで実装した呪文石でもその一部です。ですからもう一度試したくなり、ヒントになったのがブラッドクローでした。パラディンは癒やしのカードを持っていますが、自身を傷つけるカードがありませんでした。

Peter Whalen:ジカールのオリジナルのデザインは「このミニオンに与えられたダメージは代わりにヒーローに与えられる」というものでした。結局は回復したいだけ回復でき、しかも高い体力を維持できる今のデザインに落ち着きました。このアイデアにより、パラディンは非常に高い60という体力を得ることができるようになりました。夢のようです。

IGN:集団ヒステリーは盤面をクリアする強力なカードですが、これについての話はありますか?

Peter Whalen: 騎士団の頃からアイデアはありました。ただそれはヒーローも攻撃対象に含めるもので、少し遊んだだけで私達は「このカードは嫌いだ」となりました。トロールのためのセット(天下一ヴドゥ祭)のリリースに合わせて「ミニオン同士だけならいいんじゃないか」と考え実装に至りました。このカードが何マナならいいのか考え、現在の5マナに設定しました。

IGN:ハンターの呪文石に対する強力なカウンターですね

Peter Whalen: そうですね

Dean Ayala:基本的には集団ヒステリーのようなカードを作らないようにしています。それは、そのカードを読んだときに何が起こるか理解できるようになっていて欲しいからです。

Peter Whalen: 実際に唱えると「こうなったか」と理解できます。

Peter Whalen: もし興味があれば、メカメカ大作戦のリーサルパズルの最後の問題をやってみてください。1枚の集団ヒステリーで解決します。

Dean Ayala:とても複雑ですが「おそらく盤面をクリアできるだろう」と思って唱えればだいたい大丈夫です。

Peter Whalen: 文字通り乱闘ですね。

Dean Ayala:望むなら計算することもできますが、ほとんどの人はやらないでしょう。

 

IGN:怪力乱心はとても興味深いカードです。このカードにはどんな発想がありましたか?

Peter Whalen: これはWorld of Warcraftからのアイデアです。プリーストは究極の力のために全てを投げ出す、というストーリーがあります。当初はデッキと手札のミニオンをバフしていましたが、ブワンサムディーなどと組み合わせると強力すぎたため、デッキ内だけにしました。私達もたくさんのテストプレイをしましたが、プレイヤー達がこのカードを使って何が正しいのかを試している、そしてそこから何かが生まれるというのを楽しみにしています。

 

IGN:重いコントロールメタでしか機能しないと考えていますか?

Peter Whalen: 何が正しいかはわかりませんが、ロングゲームになりバリューを求めるゲームでは求められるものになるかもしれません。自分のマナ・クリスタルを破壊することがメリットになる理由があるのなら、どんなカードであれ私たちは作成します。モジョー使いジヒィは両方のプレイヤーのマナを破壊し、同じマナ速度で闘うことを強制します。なんらかのカードの助けが必要かどうかは、スタンダードローテーション後を見守る必要があります。

IGN:リリース前に微調整したりしましたか?

Peter Whalen: はい、マナ・コストとバフ対象に手札を含めるかは調整しました。

IGN:強すぎたりしたのでしょうか?

Peter Whalen:はい、私達は気に入ったデザインのカードについては極端なバージョンにして効果を確認します。3マナで自分のマナクリスタルを3つ破壊し、手札とデッキのミニオンを+3/+3するというバージョンは強すぎました。あまりにも強かったので、そこからかなり弱めに調整しました。

IGN:モジョー使いジヒィの話が出ました。このカードはロングゲームで起こる避けられないコンボの究極の対抗策です。このカードについて話がありますか?

Peter Whalen: いいデザインのカードだと思っています。ローゼブのように、対戦相手を混乱させることができます。相手が混乱している間にアグロデッキやミッドレンジデッキで攻め立てることができます。相互作用がもたらす、良いタイプのカードだと思います。

IGN:シャーマンはカエルの精霊とクラッグワがレジェンドでした。それらについて教えてください。

Peter Whalen: 精霊のアイデアが先にありました。トロールや魔女など神秘的な雰囲気を持つシャーマンにはいくつかのヴードゥー呪文を唱えてほしいと思っていました。元々はべテックというカードを作っており、その効果は「雄叫び:このゲームで10回呪文を唱えていた場合、敵全体に10ダメージ与える」というものでした。ただ、あまりにも強かったためこのカードはやめ、クラッグワを考えました。クラッグワは多くのカードを使いながらミッドレンジのバリューを出せるカードで、べテックよりも繊細で面白いカードだったため、クラッグワを実装しました。

IGN:天下一ヴドゥ祭の中でも、クラッグワのカードアートが一番好きです。

Peter Whalen: 素晴らしいですよね。シネマティックトレーラー内でも輝いています。

IGN:ですね。

Peter Whalen: このセットには既に大きな猫がいました。シャヴァーラとハラッジです。なので、もう猫はいらないという話になり、クラッグワを実装しました。そして「全部倒そう」というデザインではなく、より多くのカード・アドバンテージを得る方に移行しました。カエルの精霊とクラッグワの組み合わせは、多くの呪文を手に入れることができます。

IGN:両方とも本当に面白いカードです。カエルの精霊のテキストを読んでから、どんなふうに呪文を連鎖させようか考えました。そしてクラッグワのテキストを読んでから不安定な進化がまだスタンダードセットに存在する事に気づきとても興奮しました。

Peter Whalen:とてもいいですね。私はクラッグワがプレイされていることに喜びを感じています。

IGN:プレイテストはどのように行いましたか?また、変更した点はありますか?

Peter Whalen:精霊は初期からかなり安定していましたが、クラッグワはある程度調整を行いました。特に不安定な進化に関してはある程度の量をテストプレイしました。クラッグワのバリューを活かすデッキ、ミッドレンジデッキ、コントロールデッキなどです。

Dean Ayala:シャーマンのテストプレイには興味深いものがあります。現在のシャーマンにはシャダウォックと偶数の両バージョンがあり、これらはまったく別タイプのデッキです。そしてどちらのデッキにも精霊とクラッグワの採用はピッタリとは収まらないため、人々はなにか別のタイプを探るかもしれません。

 

※クラッグワは当初ウォリアーのカードとして考えられていた。下記2枚のカードの効果はそれぞれ、以下の通り。

左:「攻撃できない。あなたがミニオンを1体引く度、そのコピーを1体召喚する」
右:「雄叫び:自分のデッキから最もコストの高いミニオンを3体引く」

 

IGN:さて、最後にウォーロックについても伺いましょう。虚無の契約はすごいカードですね。どのようにして生まれたのでしょうか?

Peter Whalen:(笑)このカードは…最終設計段階で捨てるかセットに含めるか議論していました。皆で輪になって座り、20分ほどカードのアイディアを出し合いました。

Dean Ayala:とても長い時間でした。

Peter Whalen:誰かが「お互いのデッキの半分を破棄する」のはどうだろうと言い、笑いながらそれで行こう、となりその日は帰りました。

Dean Ayala:もちろん翌朝には「皆本気なのか?」となりました。

このカードは全てのウォーロックデッキに入るものではありませんが、このカードが非常に強力に作用するメタゲームを想像することもできるでしょう。また、強弱に関わらずこの手のカードを楽しむプレイヤーもいます。そのような一部の人にとっては、とても楽しいカードです。

IGN:これとは別に、もっと強く安いバージョンがあったのでしょうか?

Dean Ayala:調整をしていて考えていたのは、ズーに必ず入るようなカードにはしたくないということでした。このカードは特定のプレイヤーや特定のメタで機能するカードです。

Peter Whalen:このようなカードが好きなプレイヤーが多いことは事実です。Blizzconで発表したカードの中で、一番反響が多かったと記憶しています。このカードは皆が直感的に興奮していたカードでしょう。これは非常に重要なことで、派手に何かを破壊するカードを愛している人が沢山いるのです。

 

※ウォーロックのレジェンドハイリークと精霊の原案。効果はそれぞれ以下の通り。

左:「攻撃できない。自分の呪文のコストは、マナの代わりに体力を使用する」
中:「自分のヒーローは1度に1ダメージしか受けない」
右:「自分のターン中、自分のヒーローが受けるダメージの代わりにマナを回復する」

IGN:ボツにしたデザインのカードはどんなものでしたか?

Peter Whalen:すみません、覚えていません。

Dean Ayala:(画像のGrimoire of Serviceを指して)Grimoire of Serviceは味方のミニオンを選択して、手札とデッキと盤面にコピーするという効果です。ヴォイド・ロードと非常に相性がよく、恐ろしく強力でした。

IGN:ウーンダスタ、ハッカー、ダ・アンダテイカについての話はありますか?

Peter Whalen:ウーンダスタとダ・アンダテイカは考えた当初のアイデアでそのままリリースしました。しかし、ハッカーはズルジンの次(2番目)に調整を繰り返しました。ケガレた血について色々試しています。ケガレた血を2枚デッキに加えてシャッフルするかどうか、加えるのは自分のデッキだけなのか、お互いのデッキなのか、それとも相手のデッキだけなのかなどです。

また、「ターン終了時に他のすべてのミニオンを破壊する」という効果もありましたし、ミニオンを破壊した場合それらのコントロールを奪うというバージョンも有りました。敵のヒーローパワーを破壊するというバージョンも有りました。

IGN:ヒーローパワーの破壊は永久にですか?

Peter Whalen:そうです。

IGN:うへぇ

Peter Whalen:奇数偶数が流行している今、それは非常に意味がありましたが、同時に非常に危険なものでもありました。ケガレた血のメカニズムはWorld of Warcraftの世界を再現したものです。

 

※下記画像の効果は「雄叫び:ケガレた血を相手のデッキに埋める」というもの。

IGN:ヒーローパワーを破壊するというアイディアは、私は好きですよ。いつかゲームに採用してください。

Dean Ayala:それは時間がかかりますね…

Peter Whalen:すぐかもしれませんよ?

IGN:ハハ、期待しています。今日は貴重なお時間をありがとうございました。

 

訳:0、ahirun