「ナスリア城殺人事件」開発者インタビュー(2022年6月)

ナスリア城殺人事件インタビュー

新拡張「ナスリア城殺人事件」について、BeerBrick・4GamerAUTOMATONによる合同インタビューを行いました。インタビューに答えてくれたのは、ゲームデザイナーのCora Georgiou氏とシニアナラティブデザイナーのValerie Chu氏の2人です。

「殺人事件」というテーマの選出理由や新キーワード「吸魂態」や新カードタイプ「場所」などについて伺いました。


– 今回のテーマは前回と大きく変わって「殺人事件」になりました。なぜこのテーマにしたのでしょうか?

そうですね、たしかに「深淵に眠る海底都市」と比べるとかなり違います。

マーダーミステリーを模したセットを作るのがずっと私の夢だったんです。子供の頃からミステリー小説を読んだり、映画やテレビ番組を見る事が好きでしたし、暗く怖い題材を、ハースストーンチームがライトで楽しく無邪気な雰囲気に作り変えてくれるのはとても楽しいです。そんなハースストーンにこのテーマは相性が良いと思いました。

– このタイミングで「殺人事件」を選んだ理由はなぜでしょうか?2022年2回目の拡張セットだからだったり、夏だからといった理由はありますか?

両方の理由が少しずつ混ざっていると思います。

2021年は、最初から3つのセットをつなぎ合わせようと1年を通しての長い物語を作りました。そして、その取り組みは素晴らしい結果に繋がりました。

ですが、今年は久しぶりに3つの拡張を通して様々な背景や物語を語る機会に恵ました。だから…ちょっとわがままかもしれませんが、私は怖い話が好きですし、怖い物もとても楽しいと思うので丁度良いタイミングだと感じていました。そうですね、ちょうどいいタイミングだった気がします。

– 4年前の「妖の森ウィッチウッド」のインタビューの時、当初はウィッチウッドが「ギルニーアス急行殺人事件」というタイトルだったという話がありました。似たようなタイトルですが、今回の拡張に引き継がれた部分はありますか?

私は「妖の森ウィッチウッド」の時代はデザインチームに所属していませんでしたが、「ナスリア城殺人事件」のアイディアを出し始めた当初、まずはテーマになる場所を決める必要があったのですが、それが「ギルニーアス」でした。

Valerieさんの方が私より当時のことを知っていると思いますが、私の知る限り「妖の森ウィッチウッド」は、最終的に不気味な森におとぎ話風の設定と魔女ハガサによって別の命が吹き込まれ、当初想定していたマーダーミステリー風の拡張セットになりきれなかったのだと思います。

今回も似たテーマなのは確かです。両方とも不気味な拡張ですし、他の拡張と比べ少しダークな印象を持っているかもしれません。でも、ちょうどワールド・オブ・ウォークラフトの「シャドウランズ」拡張、特に「レベンドレス」エリアが、この拡張にとって完璧な場所だったんです。「ギルニーアス」の探索はまた少し先延ばしになってしまったかもしれませんが、今の所は「レベンドレス」と「ナスリア城」が丁度いい場所だったという事です。

– シャドウランズと言えばWorld of Warcraftでデスナイトが新しく登場しました。この拡張セットでもデスナイト関連のカードが登場しますか?

今回の拡張には「レベンドレス」に出てくるキャラクター、例えばデナスリアス陛下レナサル太子、そしてマーロック・ホームズなどのハースストーンでおなじみの顔ぶれが加わっています。

彼らが今回の拡張の主役なので、スポットは主に彼らに当てられます。拡張を通じて、あといくつかの見慣れた顔ぶれが容疑者などにいるかもしれませんが、今回は「レベンドレス」のキャラクターに特に注目してください。

– 新しいギミック「推理」はメタ(流行のデッキ)の理解がないと上手く使えない印象があります。全プレイヤーが使えるようデザインされているのでしょうか?

マーロック・ホームズ

何度か議論を交わしたデザインではあります。マーロック・ホームズは色々と推理して謎を解くという感じにしたかったので、3つの別々の手がかりを推理してもらう事にしました。

もちろんメタゲームの知識があったり、相手のデッキがどのような物かわかっているなら、手がかりの謎を解く事が楽になるでしょう。

ですが、マーロック・ホームズを終盤まで温存しておくことで、集められる情報量が増え、3つの質問の正解をより正しく推測できるようになるはずです。

ですので、メタゲームの知識が多いほど良いに越したことはありませんが必須ではありません。何よりも大事なのは、これがゲームである事です。プレイヤーにはゲームを楽しんでもらい、正解しなければいけないストレスを感じる必要はない事を覚えていてもらいたいです。

– 新しいキーワード「吸魂吸魂態)」はどのような効果でしょうか?

影渡りの扉 屍のプリースト

吸魂は新しいキーワードで、一定数のミニオンが死んだ時に吸魂を持つカードにアップグレード効果をもたらします。

普通、ミニオンが倒されてしまうと悲しいですよね?でもここ「レベンドレス」では正しくカードを使う事によって、その死が力を与えるかもしれません。吸魂態はミニオン同士の戦いに活かせるため、私(Cora)の目標の一つである盤上の戦いを増やす事に貢献できると思います。この効果を皆さんが楽しんでくれると思うと本当にワクワクします。

吸魂は手札にある時だけ効果を発揮します。たしかカードテキストにも明確に「手札にある時に味方のミニオンがx体死ぬとアップグレード」と書いてあったはずです。

例えば屍のプリーストが手札にあるとします。カードテキストの吸魂の後ろに示された数のミニオンが死んだ後、カードが手札の中でアップグレードされ、追加効果が発揮されます。屍のプリーストの場合はステータスがアップします。そしてカードイラストも一新されます。

手札にある間にカードが変身する様子は、「ダークムーン・フェアへの招待状」のキーワード変妖に似ています。

– 新しいカードタイプ「場所」はどんなアイデアから生まれましたか?

鮮血の深淵 泥溜め

「凍てつく玉座の騎士団」で追加されたヒーローカード以来の新しいタイプのカードなので私達も興奮しています。

全く新しいタイプのカード場所がハースストーンに登場するのです。これはもう内部では数年間、色々と形を
変えつつ試行錯誤してきたカードタイプです。少なくとも「荒ぶる大地の強者たち」の頃には、すでに盤面上で起動する効果の模索が始まっていました。そして今回「ナスリア城殺人事件」で、しっくりくる形を見つけられました。

場所は全く新しい種類のカードです。ミニオンでも呪文でもありません。盤面上に設置するカードで、攻撃力と体力の代わりに、耐久値と起動可能な特殊効果を持っています。場所をクリック(タップ)する事で効果を起動する事が出来ます。

マナコストなしに効果は起動できますが、一度使うと次に使えるまでに1ターンのクールダウンがあります。全ての場所には1ターンのクールダウンが設けてあります。そして、効果を起動すると耐久値が1減ります。耐久値がゼロになると、その場所は消滅します。

ですから、ある意味盤上に置いてあるヒーローパワーと言えるかもしれませんね。このカードタイプの作成に至るまで、まず私達が作り出す拡張の色々な場所や設定をみなさんに紹介したかったことが挙げられます。

特にナスリア城には、World of Warcraft内でもレイド(※10~30人でプレイするコンテンツ。ナスリア城はパッチ9.0のレイドで2021年初期の主力多人数コンテンツだった)中にプレイヤー達が素敵なルーンを城のあちこちで見ることが出来たのです。それを今回の晩餐会というテーマにそって紹介できたらなと思っていました。

それと同時に、プレイヤーがゲームのどの地点でも効果を発揮でき、その効果が確約される事が目に見える形の新種カードを作りたかったのです。繰り返し言いますが、場所には体力もなく、攻撃もされません。破壊できませんし、呪文やヒーローパワーやミニオンの効果の標的になる事もありません。

よって場所をプレイすると、その効果がその後いつでも好きな時に使えるとプレイヤーが確信できるのです。

– 場所は今後の拡張でも追加される予定ですか?

今後も場所は作り続けます。これから先の拡張でも可能な限り場所を使い、その拡張の環境をお見せしたいと思います。あまり多くの場所を作らないように慎重にしたいと思っていますが、少なくともヒーローカードよりは、今後も作る予定です。これから先もっと場所を見られるはずです。

– 主役がホームズの殺人事件ですが、実際に犯人は見つかるのでしょうか?また、モリアーティをイメージしたカードはありますか?

今回のキャストはデナスリアス陛下や容疑者、そしてマーロック・ホームズと沢山います。そして謎解きの先陣を切るのがマーロック・ホームズです。ネタバレはあまりしたくないのですが、どんでん返し的な展開も様々用意してあります。さらにマーロック・ホームズの知識はあまりにも凄いので、現状でライバルと呼べるキャラクターはいないと考えています。

モリアーティのカードは考えはしましたが、モリアーティをネタにマーロック系のダジャレを考える事が難しすぎて私達にはできませんでした。

–ではワトソンは?

ワトフィン

マーロック・ホームズのカードイラストをよく見ると、肩にお友達の蛙が乗っているのがわかりますよね。蛙の名前はワトフィンです。

– 今回のレジェカードのレナサル太子は独特な効果ですね。開発中の面白エピソードがあれば教えてください。また、なぜ40という数字に落ち着いたのでしょうか?

レナサル太子

実はこのカードには裏話があるんです。「荒ぶる大地の強者たち」のミニセット「慟哭の洞窟」を作っていた時の話です。

大ドルイド・ナラレックスというレジェンドカードを覚えているでしょうか。開発当初は大ドルイド・ナラレックスの効果で、40枚のデッキを組めたのです。それは私達のお気に入りで、ワクワクする要素だと思っていました。でもいざ実践してみると、あまり強くなかったのです。

そして今回、レナサル太子のデザインに取り組んだ際、面白そうだったのでゲームのルールを少し曲げてみようかなとも思ったのです。まだ40枚デッキを組むプログラムが残っていたので、思っていたよりもかなり楽にレナサル太子を実際に作る事ができました。

ただ、40枚デッキを組む事へのご褒美的な何かがまだ必要だったと感じていました。個人的にはデッキを組むことそのものがご褒美であるべきだと思いますが、ついでに体力を10追加するのが良い落とし所と決めました。

こうしてレナサル太子が生まれました。

– 国内では新パック発表の時にPV(プロモーションビデオ)に注目が集まります。今回のコンセプトや方向性について教えてください。

「深淵に眠る海底都市」のPVと比べるとかなり違ったPVに仕上がりました。そしてデナスリアス陛下のファンのプレイヤーにとってはとても楽しめる内容になっているはずです。

見慣れた顔も出てきますし、今回の拡張で狙っていた不気味な雰囲気もきちんと醸し出せています。とても素晴らしい出来のPVだと思っています。

– 今年の新年度でスタンダード環境は盤面で戦うデッキが増えた感じがします。昔のコントロールデッキのような相手のカード(デッキ)を除去して受けきるデッキを最近見かけませんが、今後もそのようなデッキは作らずこのままの方向性を続けるのでしょうか?

両方のデッキタイプを共存させる事は可能だと思います。仰ったとおり、現在では昔ほどはファティーグ系の耐え抜くコントロールウォリアーのような戦略はあまりありません。

私達が、楽しく派手なカードデザインを好んでいるということも関与しているでしょうし、それらのカードは実際にエキサイティングな展開で試合を終わらせます。かといって、消耗戦を勝ち抜くタイプのデッキが存在すべきではない、とは言っていません。私はそのようなデッキも絶対に存在すべきだと思っています。

そして、そのタイプのデッキは盤面を主に戦う環境なら成功できると思います。特に、除去を戦略として上手く使えるデッキですね。ですので、消耗戦が得意なコントロールデッキを好んでいる皆さんは心配しなくて大丈夫です。

私達も、そのタイプのデッキが気に入っているのです。でも同時に私達は盤面上のゲームプレイを推奨したいのです。

現在のメタで見られるようなコンボ系のデッキは減らしたいと考えています。それは今年度の最初に「深淵に眠る海底都市」で目指した事ですし、今年度1年を通しての最重要目標にしようとしています。

恐らく、この先も似たような方向性で進む事でしょう。そしてOTKデッキの流行がもう少し廃れるようなメタになれば、コントロールデッキが栄えるチャンスが出ます。

特にズーウォーロックや盤上戦をベースにするドルイドデッキの人気が出ればですね。ナスリア城がもたらす結果を見れば満足すると思いますよ。

– 今年のロードマップで明かされていないアップデートはハースストーン全体に関わるものでしょうか?それともゲーム体験を快適にするものでしょうか?

ヒドラ年 ロードマップ
PHASE2(夏)とPHASE3(冬)に未公開のアップデート項目あり

確かに謎ですね。私の直感だと…現状ではまだお話できる状態ではありません。でも今年度の全体像を作り始めに、様々な取り組みを行っています。それはとても素晴らしいシステムになっています。その一部は今拡張の公開と同時か、今回の拡張サイクルを通してお目見えするかもしれません。

様々なシステムにワクワクしてもらえると思いますし、全てのプレイヤーにとって最善の体験を提供するべくプレイの快適化を今年の目標の主軸として掲げています。

去年は新ハースストーンコンテンツ的にはマーセナリーズの実装で大きな一年となりました。今年は色々なモード全体で全てのプレイヤーのゲーム体験が向上するよう、サポートを強化していきたいと思っています。

– バトルグラウンドも新しい大型アップデートの時にPVがあったら喜ばれると思います。是非お願いします。

そうなったら私達も嬉しいですね。もちろんネタバレはできませんが、実は私(Cora)はバトルグラウンドのテストプレイもしていますし、個人的に大好きですし、バトルグラウンドを沢山プレイしています。

でも私もValerieもバトルグラウンド開発チームには入っていないので、彼らの計画がどんなものかは知りません。でもそうなったらとてもクールですね。バトルグラウンドを楽しんでくれているプレイヤーがても多いことに感動しています。

特に「ナスリア城殺人事件」で、バトルグラウンド特有の素晴らしいコンテンツも用意しています。6月25日~26日のロビーレジェンズ大会でバトルグラウンド関連の新情報がお披露目された事も知っています。プレイヤーの皆さんがそれをワクワクして見てくれていたら幸いです。

でも本当にそうですよね!私達もバトルグラウンドのPVを見てみたいです。ブリザードのストーリー&フランチャイズのチームがカットシーンを作る時は必ず素晴らしい物が出来上がって来ますからね。だから何を作るにしろ、彼らが作る機会があったら凄い事になるはずです。