【開発者コメント】ハースストーンの新しいメタとケレセス公爵(後編)

パッチ後の環境やメタについての開発者コメント(後編)

「Mike Donaisが語るハースストーンの新しいメタとケレセス公爵」と題してPCGamerに投稿されたゲームデザイナー、マイク・ドナイス氏のインタビュー記事の抜粋です。

掲載元:Mike Donais on Hearthstone’s new meta and why Keleseth is crazy (but not broken)(pcgamer.com)

 

(←前編)

 

– ヒーローカードは、クエストカードと違って専用のデッキを組む必要がないところが好きです。クエストカードと比べてヒーローカードの登場で得たものはありますか?

ヒーローカードは「ティリオン・フォードリング」のような何のデッキにも入れられるデザインとなっていますが、そのままティリオンの代わりに入れるカードでもありません。デーモンウォーロックをプレイしているならウォーロックのヒーローカードを入れることも出来ますが、デーモン要素が無ければ入れることは無いでしょう。

 

– 以前、私が「烈火の戦斧」が最も優れているカードだと言いましたが、あなたはティリオンが優れていると言っていましたね。弱体化の対象になったのは「烈火の戦斧」のほうだったので、私が正しかったということでいいですか?

そうですね、貴方のほうが正しかった(笑)

 

– (烈火の戦斧が弱体化された今)一番価値が高いカードは「ティリオン・フォードリング」でしょうか?

恐らく、ヒーローカードになると思いますが、カードの価値は条件によって変わります。コントロールデッキ対決などゲーム展開が遅い場合は、ヒーローカードは驚くべき価値を発揮するでしょう。「死線の追跡者レクサー」は、毎ターンカスタマイズされた獣ミニオンを与えてくれます。視点を変えれば、ティリオンも素晴らしいカードでしょう。ヒーローカードが出なければ彼は最も価値のあるカードでした。

 

– 条件を取っ払って、単純に評価したらどうなりますか?

データを確認しなければわかりませんが、以前の状態なら「錬気」と「烈火の戦斧」は確実にトップ5に入っていたでしょうね。後はケレセス公爵ですかね…

 

– The Elder Scrolls: Legends(bethesda社のカードゲーム)でも「ケレセス公爵」と似たようなカードがありましたが、ユーザーの猛反発により2週間程度で弱体化されました。「ケレセス公爵」は大丈夫だと思いますか?4ターン目に出てくるビッグプリーストのバーンズのようなもので、2ターン目に出すことで相手を萎えさせることになる気がします。

そうですね、このようなカードはユーザーを動揺させる原因になることがあり、危険です。ただ、私は「ケレセス公爵」がそれほど狂っているとは思っていません。理由は以下の通りです。
「ケレセス公爵」はアグロデッキに対しては極端な例を示します。2ターン目で貴方が「ケレセス公爵」をプレイしたとしましょう。その後の2ターンでスペルカードを引いたとしたら、5ターン目、6ターン目に勝負を決めようとしてくるアグロデッキには致命的な状況になるでしょう。

 

– バーンズのスタンダード落ちに、密かに期待していたりしますか?
(次のスタンダード落ちは、予定通りなら4月頃)

そうですね、バーンズはケレセス同様極端なカードですので、スタンダード落ちさせて、新しいカードで新しい発見をして欲しいと思います。

 

– 「凍てつく玉座の騎士団」と「大魔境ウンゴロ」のリリース後の環境は最終デザインで予想できましたか?

私たちはある基準持っており、カードのパワーレベルを10点満点中、8点を目指して設計を行っています。8点が目指せないときは7点を目標にします。パワーバランスが良くないと思った時には、低めに設計し直します。+1点、-1点の差が出ることは予め認識しており、その点は問題ないと考えています。

「大魔境ウンゴロ」の時にはチェックするカードが少なく、ほとんどデザイン変更はせずにバランス調整だけで済ませられました。

 

– 時には「このカードが強すぎるのは知っている。でも、それでいいんだ」と言わなければならないこともありますよね。Max McCall(ブリザードのシニアデザイナー)が以前こう言ったのを覚えています。「ドラコニッド諜報員がぶっ壊れているのは、ドラゴンプリーストというデッキタイプが存在するために必要だったんだ」

その通りです。多くのプレイヤーはドラゴン種族を使ったデッキを求めていましたが、ランク戦で勝つことが難しかったため「ドラコニッド諜報員」が必要だったのです。「ドラコニッド諜報員」は前述のパワーレベルでいうと9点でデザインされたカードでした。

 

– では、「究極の侵蝕」は何点だったのでしょう?8点を目指したのですか?それとも9点?10点でしょうか?

10マナというのは沢山のことが出来るはずです。私たちが「究極の侵蝕」を作る際に考えたのは、「按手の儀式は8マナを使って3枚カードを引き、8点回復したあとはほとんど何も出来ないよなぁ。10マナだったら何が適当だろう?」ということでした。

もちろん、ドルイドでは状況は違います。彼はマナ加速カードを持っており、消費したカードを補充できるようになったためマナ加速カードの価値が変わりました。

「錬気」が弱体化された今、「究極の侵蝕」は少しまともになったと思います。今のパワーレベルは10点中8か9です。

 

– ちょっと話は戻って「烈火の戦斧」についてです。Brian Kiblerは、「弱体化は妥当だったが、理由について説明しすぎて反感を買った」と述べています。説明はどこまでするのがよいと考えていますか?
(弱体化についての説明:https://us.battle.net/hearthstone/ja/blog/21029448/

私は透明性を非常に重視しており、私たちが何を考えているのか、それが何を意味しているのかを素直に伝えたいと考えています。そうすることで、プレイヤーの殆どは納得できると思います。もし納得出来なかったときは、(私が同意できない意見でも)その意見を聞きたいたいと思っています。それが私の目標です。

 

– 対面ではこうして穏やかに楽しい会話ができますが、インターネット上では激しい罵倒に合うこともあると思います。そんなときはどうしていますか?

長年の経験で学んだことですが、ブログ記事を見て理解しようとしている人は、ブログを見ている人です。それをしない人たちは、自分だけの解釈をしています。私は彼らに読んで理解して貰いたいと考えて書いています。

 

– 気分が悪くなることはありませんか?

ほとんどありません。

 

– もし貴方がブリザードを去るとしたら、後任の貴方(マイク・ドナイス)にどのようなアドバイスをしますか?

んー…、ブリザードに戻ります!!

 

– ブリザードが好きなのは知っています。ただ、カードデザインの面でアドバイスを…

(笑)そうですね、私はいつも何が楽しいかということを考えています。新しいシステム、新しいカード、新しいメカニックを設計するときにみんなが楽しめるかどうかということを考えればいいのです。

 

終わり

訳:ahirun

 

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